2018年4月24日から25日、EU(欧州連合)と国連はベルギーのブリュッセルにて、シリア及び地域の将来の支援に関する会合‘Supporting the future of Syria and the region’を共催、悪化するシリアの人道状況を鑑みて、国内および周辺国に避難するシリア国民への人道的支援についての協議が行われる予定です。
世界の医療団(MdM)は同会合に出席、医療アクセスの確保について呼びかけます。
国際社会における意思決定者がその影響力を有用し、市民の安全の確保、医療へのアクセスが妨げられることのないよう、そして人が生きるそのセーフガードとなるケアを可能にすること
医療だけでない人権が侵害されることのない生活、社会的配慮、安全が持続されるための必要資金の確保がなされること。
不透明な治安状況は、医療システムにも大きな打撃を与えています。111の公立病院および1806あった医療施設の半数以上がすでに閉鎖、または部分的にしか機能していません*1。シリア人医療者の半数以上が国外へ避難し、医療従事者の教育は立ち行かず、それは国の医療システムを長期的な混乱へと導くことになります。
MdMフランス理事長のフランソワーズ・シヴィニョンは、次のように述べています。
「今、シリアでは約1130万人が医療を必要としています。紛争が長期化するにつれて、何年も続く避難生活、栄養不良、衛生状態の悪化、ワクチンへのアクセスが途切れることなどの状態が蓄積され、それらがまた新たな公衆衛生上の脅威、緊急事態を招くのです」
2018年、医療施設を標的とする意図的な攻撃はこれまでの記録を塗り替え、かつてないレベルに達しています。世界保健機関(WHO)によると、今年1月から2月の2カ月間で、保健医療施設と医療従事者に対する67件の攻撃が確認されました。これは2017年1年間に確認された112件の攻撃の半分をすでに上回っています。
長期間にわたり爆撃と戦闘にさらされる状況は、地域社会と市民、特に子どもたちに極度の精神的苦痛をもたらします*2。メンタルヘルスワーカーは必然的に不足し、また繰り返される避難と移動は継続的なケアを妨げています。
レバノンとヨルダンなどのシリア難民受け入れ国において、常に憂慮されるべき問題になるのが、難民や弱い立場にある人たちの医療へのアクセスです。
レバノンでは、サービス、輸送のコストが医療へのアクセスを阻害します。交通手段が限られ、プライマリヘルスケアセンター(PHC)など医療施設数が少ない遠隔地において、地理的および物理的なアクセシビリティは時に障壁となりえます。難民は時に不法滞在の観点から、移動を制限されることもあるのです。
支援金の不足は、プライマリヘルスケアや医療施設での医療の提供そのものが脅かされる事態につながります。
調査では、ヨルダンやその周辺国に滞在するシリア難民の74%が慢性疾患の治療を受けておらず、その理由として挙げられているのは高額な医療費によることを示しています。*3 最近になって、ヨルダン政府はシリア難民に対し、医療にかかる総費用の80%を負担するよう求める決定を下しました。
「医療は贅沢ではありません。どんな状況下であっても、人権として医療を受ける権利があります。今回の会合に参加するすべてのキープレイヤーが果たすべき責任です」MdMフランスの理事長はコメントしています。
*1 Health Cluster Bulletin. February 2018
*2 Ibid
*3 UNHCR (Dec 2016) Health access and Utilization survey Access to health services in Jordan among Syrian refugees