リアーナ(23歳)がウガンダの首都カンパラを歩くと、通行人や通りの店主たちの多くが足を止め、反感の目で彼女を見つめます。周囲の人の言葉を無視して、リアーナは6か月前から借りている狭苦しい部屋への道を恐れずに歩き続けます。彼女は16歳のとき、LGBTを支援するグループが開催するワークショップに参加し、彼女のアイデンティティが生物学的なジェンダーと一致しないことに気づき始めました。4年後、彼女は学校を終えて仕事を見つける前に、家族の元から追い出されました。今では周囲の嘲りや侮辱、脅しまでにも慣れてしまいました。ほとんどの時間を鍵をかけた部屋の中で過ごしています。
©Olivier Papegnies
世界の医療団は、2015年からカンパラにあるMulago病院で、現地パートナーのMost At Risk Populations Initiative(MARPI)とともに活動しています。MARPIとは、LGBTやセックスワーカー、薬物使用者など、社会から疎外された人々に対し、性感染症のスクリーニングなどのヘルスケアサービスを無償で提供している団体です。
世界の医療団は、新しい待合室を作り、MARPIの受入れを増やすことでもサポートしています。職員たちは“検査が私たちを強くする”と書かれた腕輪を巻き、壁際には6,000個のコンドームが積まれています。ほしい人には無料でコンドームを配布し、肛門科を専門とする医師や看護師たちのトレーニングを行っています。患者の症状は、肛門の病気、特にパピローマウイルスの感染によるコンジローマなどです。
「患者さんたちが私たちを信用してくれるまでには長い時間がかかります。なぜなら、彼らは症状に苦しみながらも、相談するのは恥ずかしいと感じているからです。私たちは彼らに検査を受けるよう説得しなければなりません。放置しておけば病変は拡大し、がんになることもあるのです」肛門科のHarriet Nanfukaは話します。
Harrietの診察室の前でSolomon(20歳)が検査の結果を待っていました。「私が住んでいるKawempeという地区の活動家がこの病院のことを教えてくれました。私がここに来たのは検査を受けるためと、コンドームをもらうためです。両親は私が同性愛者であることを知りません」
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同性間における関係は、しばしば嫌がらせや攻撃の対象となったり、刑務所に送られたりします。LGBTであると明らかになると非常に危険です。ウガンダのタブロイド紙は彼らの写真を掲載し、同性愛者と確認した人々を恥ずべき人として公然と発表することで知られています。2010年、あるタブロイド紙は「絞首刑にせよ」という言葉の横に数十人の写真を掲載しました。
同性愛者の人々は、常に脅迫に直面します。直面するであろう悪い影響や不名誉への恐れから彼らの関係がオープンになることを心配し、多くは人目につかないよう隠れて生活しています。
ウガンダにおいてLGBTの人々が医療機関にアクセスすることは非常に困難です。多くのLGBTの人々は医療提供者による治療を断られています。これは、特に地方において多くの病気が診断されていないことを意味します。MARPIは遠隔地において、医療へのアクセスを確保し、これらの人々にリーチする重要な役割を果たしています。「差別は医療提供者の間でも存在します」MARPIの医師、Peter Kyambaddeは話します。「しかし、医療、または精神的サポートを必要としている人に提供できないという法律は存在しません。ここの私たちの患者さんは敬意をもって治療を受けられることを知っています」
警察や政府から常に暴力や嫌がらせの脅威がありますが、世界の医療団とMARPI、そして、その他、医療を提供する団体は、いつかリアーナのような人々がオープンに、そして平和に生活ができるよう、ウガンダのLGBTの権利を促進し、守り続けています。
※LGBT
L・・・Lesbian (女性同性愛者)
G・・・Gay (男性同性愛者)
B・・・Bisexual (両性愛者)
T・・・Transgender (身体的な性とこころの性が一致しない人)
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