2018年2月9日、厚生労働省は、生活保護改正法案(生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案)を提出しました。同法案では医療費削減を名目に、生活保護受給者に対し、先発医薬品に比べ価格の安い後発医薬品(ジェネリック)の使用を原則化する方針が定められています。医療費削減をはかる姿勢を打ち出すための道具として、弱者の選択権が奪われることは差別であり、決して容認できるものではありません。
現在、生活保護受給者の医療費は、生活保護法による医療扶助費で全額負担されています。これまでも段階的にジェネリック医薬品の使用を強制する法改正が実施されており、2017年度の生活保護受給者のジェネリック医薬品使用率は72.2%、医療費全体でも65.8%(出所:厚生労働省配布資料)となっています。一方で、ジェネリック医薬品が調剤されなかった理由として、67.2%が「患者の意向」とされていますが、これらにはアレルギーや使用感によるものも含まれており、「患者の意向」すべてが患者自身の選好によるものではないと考えられます。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ薬効を持つとされますが、形状や添加物は先発医薬品と異なり、味や溶け方、塗り心地や貼り心地に違いがあるため、薬効が異なると感じたり、不安を感じる患者も多く、そのほとんどは本人の選り好みによるものではありません。
薬効が同じで患者に不利益がなく医療費削減が目的だとしたら、国民全員に対し、ジェネリック医薬品の使用を原則化するべきです。なぜ生活保護受給者に「だけ」義務付けるのでしょうか。特定の集団に使用を義務付け、選択の自由を奪うことは差別にほかならず、税金で生きる生活保護受給者には安価な薬で十分だと、政府自らメッセージを送っているようなものです。それがどれだけ受給者を傷つけ、差別にお墨付きを与え、国民の間に分断を作ることになるのか、その害悪は計り知れません。
私たち世界の医療団は、「医療」から疎外された人々、必要な医療にアクセスできない原因、人権侵害やその現状について「証言」することを使命のひとつとして、活動に取り組んでいます。健康にかかわる選択において、その自由が他の誰かによって奪われることは、あってはなりません。
生活保護「改正」法案34条3項の撤回をここに強く求めます。
©MdM Japan