©Patrick Bouffard

フランス:凍てつくパリの路上で身を潜める移民たち

紛争や暴力、迫害に苦しむアフリカ・中東の国の人々が、安全な環境を求めてヨーロッパを目指しています。しかし、無事にヨーロッパにたどり着いても、難民キャンプから退去させられ路上で寝泊りするしかなかったり、医療を受けるために保険が必要だったりするなど、移民や難民の人々はとても過酷な状況に置かれています。

約1,000人が路上で生活していることを確認


2017年7月27日、フランスのマクロン大統領は演説で、年末までに路上で寝泊りする移民や難民がいなくなるようにしたいと述べました。しかしながら、気温が下がり、本格的な冬が近づいてきた11月16日、世界の医療団と国境なき医師団は、パリ北東部と、郊外のセーヌ=サン=ドニ県で、今も約1,000人の移民や難民が路上で肩を寄せ合い、寝泊りしていることを確認しました。

8月18日、フランス当局は、約2,700人の難民が滞在していたパリ北東部のポルト・ドゥ・ラ・シャペル周辺のキャンプを解体、それ以来、難民たちの環境は著しく悪化しました。ポルト・ドゥ・ラ・シャペルには、難民申請が可能な難民受入れセンターがあり、この周辺では、支援団体も活動しています。難民たちはフランス当局に見つからないよう、身を潜めながら寝泊りできる場所を探しています。

©Patrick Bouffard



証言


ポルト・ドゥ・ラ・シャペル周辺で出会った人たちの証言の一部です。

モハメッド 19歳 ギニア出身

11日前にパリに着きました。今、病院に宿泊しています。私は教会の隣で警察に捕まりました。難民の許可証もなく、路上で寝ていたからです。私は警察官たちにドイツで渡された書類を見せ、ドイツで私の難民申請が拒否されたこと、そして、ドイツを出なければいけなかったことを説明しました。もしそのまま留まっていたら、ギニアに送還される恐れがあったのです。

警察官たちは、私を眠れる場所に連れて行ってくれると言いましたが、それが刑務所だということに気がつきました。拘留中、警察官のひとりがドイツでのことを話してきました。彼は書類を見て、私がフランスにいるための解決策はない、ギニアに送還されるだろうと言いました。それは私にとって本当に恐ろしいことです。ギニアに帰ることなどできません。具合が悪いので薬がほしいと警察官たちに訴えましたが、それは禁じられていると言いました。それから頭痛がし出して、あとはなにも覚えていません。

私はギニアでふくらはぎと頭に弾丸を受けたことがあり、それ以来、てんかんの発作を起こします。目覚めたとき、私は病院のベッドの上にいました。3日前から人々が私のところに来て、バッグを調べたり、書類をコピーしたりするようになりました。私はこの人たちが誰なのか知りません。彼らは私と話をしようともしません。なぜ話さないのか理解できません。私はフランス語を話せます。彼らが県の職員で、私をギニアに送還する恐れのあるドイツに戻そうとしているのではないかと怖くなりました。

彼らはまた訪ねに来ると言っていましたが、それから3日が経過しました。何も情報がありません。ですから、病院を出て、あなたたち(世界の医療団)を訪ねて来たのです。私にはあなたたちの助けが必要です。



匿名 コートジボワール出身

私は、トイレに行くと肛門から直腸が外側に出てきてしまい、そのたびに手で押し戻さなければいけないという症状に苦しんでいます。すぐに治療を受けたかったのですが、2日間で3つもの病院をまわることになりました。

最初の病院では、私の症状を診ることができる医師がいないため別の病院に行くよう、受付で言われました。私は指定された病院に行き、診察に呼ばれるまで5時間待ちました。ようやく私の番になったとき、医師はまず私に医療保険があるかどうかを尋ねました。私はたった数日前にパリに到着したばかりで、医療保険などありません。彼は、前払いするか、それとも治療をあきらめるかを私に問いました。私は食事するお金や、寝泊りするお金すらもなかったので、そのまま病院を後にしました。

症状が深刻だったので、翌日、別の病院に行き、受付で状態を説明しました。すると、彼らは、無料で治療を受けることができるという科に私をつなぎました。その科に行くと別の科に行くように言われ、さらにその科ではまた別の科に行くように言われました。そうして治療を受けることなく、午前のあいだずっと病院の中をたらい回しにされました。

週末に寝泊りしていた橋の下で、そこにいた人々が、世界の医療団のトラックに行けば、私を助けてくれると教えてくれました。私の症状はひどい状態で、路上で寝泊りしているときは本当に地獄です。世界の医療団に治療してもらえることを願っています。



©Patrick Bouffard

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