フアパン県では、早い地域で20年も前から、健康や衛生環境に関する教育普及活動を担う人材育成が行われています。また、村落健康委員会は国家保健戦略にも組み込まれている機関ではあるものの実際は外部資金に依存しているため、その人材育成や活動は断続的になりがちなうえ、世代交代も進んでいるのが現状です。
2016年、世界の医療団(MdM)が実施した事前調査のインタビューにて、10年以上も村の健康に貢献し、村人から信頼されてきた村落健康普及ボランティアに出会いました。同じ時期、何をしたら自分の役割を果たせるのか、役割を果たすための知識も能力もないと話す村落健康委員会メンバーに会い、そこで私たちは村落健康委員会の活性化に協力することを決めました。
村落健康委員会の活性化、具体的には村落健康委員会が小児に関する健康普及活動を行うにあたり、必要な知識や技術を習得する機会の提供、つまり研修の実施です。
まず2017年3月から4月にかけて、最終のコミュニティ調査を行い、村の人々のニーズに沿う研修を郡保健局とともに企画してきました。5月には、県・郡の健康教育担当者に向けたトレーナー研修を実施、事業自体が終了しても、村落健康委員会への研修を企画、継続、実施できる人材を養成するステップでもありました。
こうして10月、いよいよ村落健康委員会への研修がはじまったのです。1村5名からなる村落健康普及員、対象となる2郡の112の村、合計で受講生は560名にも及びます。1つの医療施設が管轄する村々を1グループとし、グループごとに4日間の研修を実施します。
MdMのプロジェクト対象郡では、1年目で合計17回の研修を行うことになり、11月までにこのうち8回の研修を完了する予定です。
フアムアン郡での初回の研修には、郡からトレーナー研修を受けたスタッフ4名が参加しました。それぞれ個性がありながらもチームとしては息があう笑顔が絶えない4名です。県からはスーパーバイザーとして1名、MdMチーム(メディカル・コーディネーターとコミュニティワーカー)と一緒に参加しました。県スーパーバイザーの現職は県病院スタッフですが、数十年前に村落に出向いて健康教育活動を行っていた女性です。そのほかヘルスセンタースタッフ1名も、トレーナーチームのアシスタントとして参加しました。
参加者は、3つの村から集まった合計15名の村落健康普及委員会メンバー、そして3つの村を代表する自治グループ会長1名でした。
今年の研修の主な目標は・・・
・村落健康普及委員会メンバーひとりひとりが役割を自覚し、チームとして活動する土台づくり
・村落健康普及活動に必要な小児の健康に関する知識を身につけること
・普及活動におけるプレゼンテーション能力の向上
・村落における5歳未満児の成長モニタリング活動の一環として、配布する身長体重計の使い方を学習すること(ヘルスセンタースタッフが不足しているため、村落で実施し、ヘルスセンターに報告することになっています)
・5歳未満児の成長モニタリングをより正確に実施していくこと
上記を踏まえ、フアムアン郡では、“実践”を意識したプログラムが組まれました。
©MdM Japan
-フリップチャートの使ってのプレゼンテーションの練習です。*VHCは、村に帰って村人たちに学習したことを伝えていく役割があります。
*VHC(Village Health Committee:村落健康普及員、村長、ラオス女性同盟、青年同盟が主なメンバー)
まずは、参加者が3つのグループに分かれ、参加者同士で村落健康普及委員会の役割を整理し、全体で共有します。そして小児の健康について、ひと通り重要なポイントをトレーナーから学び、プレゼンテーションの小道具として配布したフリップチャート(紙芝居形式)を使って繰り返し練習します。
3日目、4日目は5歳未満児の成長モニタリングを実施するため、身長体重計の使い方の練習や母子手帳にある成長曲線の記録方法について学習していきます。
-女性メンバーも練習。女性や子供への普及啓発には欠かせない役割を担っています。 | -MdMスタッフ(白シャツ男性)が、休憩時間に質問攻めにあっています。 |
中には、こういった基礎的に思える研修の機会さえも全くなかった参加者もいました。最初は表情が硬かったもののトレーナーチームの笑顔や言葉でリラックスしたのか研修では笑いが絶えず聞こえ、かといって集中も途切れることなく、参加者の学習意欲を促進する研修となりました。もちろん、1回の研修ではすべてを吸収しきれるものではなく不安は残ります。そんな参加者からは「もっと研修をしてほしい」との要望がありました。
開会式と修了式に参加された副郡保健局長からは、村落健康普及員への期待の言葉もありました。
村落健康普及委員会メンバーが少しでも自信をもって村人の前に立ち、プレッシャーをモチベーションに変えて活動していけるように、引き続きより効果的な支援方法について検討を続けていきます。
本事業は事業資金の多くを外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を受け、2017年2月より活動を展開しています。