一番大切なのは本人を交えて家族や周囲が話し合うこと、国や行政によるトップダウンの形になってしまうプログラムはうまくいかない。1人1人違う事情や人生があって、そこを中心に置いたケアでなければ廻らない。認知症をもつひとの話を聞いて、そのひとの生きる速度にゆっくりと寄り添って周囲がケアできれば一番いい。本人のことばや人生から生まれたプログラムであるとうまくいくようになる。
コミュニティの中にまとめ役がいて、その人は住民でもありもしかすると行政の立場である人が担ってもいいかもしれない、そこに知識のある専門家が入る、でも基本は住民の気づきからくるもの、そこが主導する形になればよりよい取組みになる。
福島県双葉郡川内村、その取組みは本人たちのニーズを調査することから始まり、それらニーズに合わせた村づくりの基本は徹底して村民が主体であるということ。
住民が主導する取組みは、希望が持てて、こまやかであたたかい。
“ベンチがあると人が集まる”
「ただベンチがあれば、そこにコミュニケーションが生まれる」と言ったひとがいた
誰かが意図した何かではない。ただ人が集まれる場所がある。真っ白な何も書かれていないキャンパスがあれば、そこに何でも描ける。描く内容は何も強制されない。ベンチは、真っ白なキャンパスのようなもの。人が集まって、話すことで、孤立しない、そこから何かが生まれ、互いにケアできる環境が生まれるかもしれない。たとえば自然発生的に生まれたラジオ体操はひとに身体を動かさせ、挨拶を生み、それは安否確認にもなった。
認知症ケアにおいて、重要なのは、
本人の人生の選択が、本人の速度の中で守られること
今、東京都内においても、認知症ケアに関係する新しいプロジェクトが始まっている。大都市であっても、小さな単位のコミュニティで取り組んでいけたらいいと思う。小さなプロジェクトはまったく意図もしなかったようないろいろな交流につながっていくと思う。
こころのケアで大切なこと・・・
人が追い込まれない街は、人がただ集まってそこに対話が生まれていることと、それゆえに何かあったときにすぐに何とかなる機動力とがある。
それはたくさんの人と人がゆるやかにつながっていることから始まっている。
森川すいめい氏
1973年、池袋生まれ。精神科医。鍼灸師。みどりの杜クリニック院長。2003年にホームレス状態にある人を支援する団体「TENOHASI(てのはし)を立ち上げ、現在は理事として東京・池袋で医療相談などを行っている。2009年、世界の医療団TP代表医師、13年同法人理事に就任。東日本大震災支援活動を継続。つくろい東京ファンド理事。NPO法人認知症サポートセンター・ねりま副理事。NPO法人メンタルケア協議会理事。オープンダイアローグネットワークジャパン運営委員。 著書に、障がいをもつホームレス者の現実について書いた『漂流老人ホームレス社会』(朝日文庫、2015)、自殺希少地域での旅のできごとを記録した『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』(青土社、2016)がある。
1973年、池袋生まれ。精神科医。鍼灸師。みどりの杜クリニック院長。2003年にホームレス状態にある人を支援する団体「TENOHASI(てのはし)を立ち上げ、現在は理事として東京・池袋で医療相談などを行っている。2009年、世界の医療団TP代表医師、13年同法人理事に就任。東日本大震災支援活動を継続。つくろい東京ファンド理事。NPO法人認知症サポートセンター・ねりま副理事。NPO法人メンタルケア協議会理事。オープンダイアローグネットワークジャパン運営委員。 著書に、障がいをもつホームレス者の現実について書いた『漂流老人ホームレス社会』(朝日文庫、2015)、自殺希少地域での旅のできごとを記録した『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』(青土社、2016)がある。
写真上:森川すいめい氏
写真中:福島県双葉郡川内村民生委員のみなさんによる寸劇、認知症患者への接し方を住民自らが考える
写真下:川内村認知症サポーター講座の様子