2016年12月28日から2017年1月4日までの間、世界の医療団は今年も医療班として参加しました。板橋での医療相談会実施のほか、シェルターに滞在する方の医療相談や診察を行いました。また大晦日にはスタッフでおせち料理を作り、シェルターにお届けしました。年越しカウントダウン直前に緊急要請を受け、医師がシェルターを訪問する場面もありました。
また同プロジェクトと協力して行うハウジングファースト東京プロジェクトのパートナーでもあるTenohasi(てのはし)の越年越冬活動では、野外での医療相談会を実施、ボランティアのみなさんのサポートを受け内科医、婦人科医、精神科医、看護師などが診療にあたりました。腰痛や腹痛などの相談を受け手当てやアドバイスを行うほか、継続的な治療が必要な相談者には「無料低額診療」の案内、年が明けてから医療機関の紹介を行いました。
プロジェクトを終えて
西岡誠医師(内科医)
「血圧が高い人、また糖尿病など治療が中断されている方が多く見受けられる。例年のことだが、年末に住処を失う若い人が多い。住まいを失い,野宿していては健康になれない。私は医師ではあるが、医療だけでなく安心して住める住まいの大切さを改めて思う。」
森川すいめい医師(精神科医)
「ここまでの活動と今回のプロジェクトも含めて路上で出会う方々からは、これまでの傾向に加えて、主に三つの問題がさらに目立ってきたと感じています。ひとつめは高齢者だけの世帯についてです。普通に暮らしていた方が高齢者となり、日常のいろいろなことが出来なくなったときにあっけなく困窮してしまう。場合によっては住まいを失ってしまう。そういう方々が増えていくように感じました。」
「行政の支援も弱いところと強いところがあると感じています。ある部分では支援が手厚いけれどある部分では薄い。地域差もあります。高齢者はそのどこにもいますが、たまたま薄い部分にいた高齢者が簡単に『住まいを失った人の世界』へいってしまう。それは本当に些細なきっかけなのだなと感じるのです。」
「ふたつめは依存症です。海外ではアルコールや薬物が多いのですが、日本はギャンブル依存が多い印象があります。今も多いしこれからも増えるのではないかと。国よってはギャンブル業界がかなりの収益を支援に充てたりもしていますが、日本にはほぼそれがありません。『誰がギャンブル依存の人たちを支えるのか』が定まっていません。」
「薬物もアルコールもギャンブルもちょっとでも関われば「有害」かどうかの前に、依存症になってしまうんです。そして今後お金がない人が増えていくほどギャンブル依存が増えていくと思います。しんどい人生の中でちょっとでも楽になりたい、と思ったときにギャンブルにはまってしまう。それは誰にも責められません。」
「最後にみっつ目。若い人の経済格差が広がっていると感じています。特段お金持ちになりたい、ということではなく『普通になりたい』と言う方が増えている印象があります。正規雇用ではなくても社会保障がついた安定した仕事がしたい、というような。そんな風に『普通』がとても遠くなっているのではないかと」