パリでは2015年にも、移民・難民を対象にした収容施設や簡易シェルターが建設されたが、衛生面、治安面など多くの問題や混乱が生じていた。
2016年10月24日、フランス政府はカレーの通称ジャングルと呼ばれる難民キャンプの解体・撤去に踏み切り、カレーに滞在していた難民はフランス各地の難民受付センターに送還されることになった。こうした劣悪な生活環境は滞在する難民、移民だけでなく、周囲の住民の不安をあおり、更なる混乱のもととなる。また後を絶たない難民・移民の流入、拡大する受入れ危機を受けて、フランス政府は受入れ体制の整備に本腰を入れ、そのとっかかりになったのがこの受付センターである。パリにこうした施設が出来るのは初めてだという。
政府から委託された支援団体が運営する。昔、工業地だった場所に巨大なドーム型テント、その奥にベッドを備えたシェルターがある。 長期滞在する施設が決定するまでの数時間をここで過ごし、事情によりすぐ移動できない難民・移民については最大10日間まで滞在することが可能である。施設内は開設したばかりとあって清潔であった。女性や子どもが過ごすエリア、家族用など細やかに配慮された造りになっており、混乱も衝突もなく秩序も保たれているのに驚いた。
世界の医療団はセンター内のプレハブで建てられたクリニックで、プライマリーケア、メンタルヘルスなどの医療支援活動を実施している。様々な言語が飛び交うなか、時として通訳ボランティアがカバーできない言語となれば、滞在する難民・移民からボランティアを募り、医師、看護師、精神科医、カウンセラーなどが診療にあたっている。