今年度もミャンマー保健省からの要請を受け、ネピドー総合病院において6月26日より1週間、形成外科ミッションを行った。私のほか、形成外科医1名(江口)、麻酔科医2名(阿久津、本間)、看護師1名(石原)がミッションに参加した。
ミャンマーミッションは初夏と冬の年2回行っているが、毎年「初夏ミッション」は学期末や祭りに重なることが多く来院患者は少ない。さらにスクリーニングリストに上がっている患者が全員来なかったり、年齢の低い(生後6ヶ月前後)患児が数人いたり、手術予定していたのに入院してこない患者もいたりした。手術件数は例年より少なめであったが、その分、余裕をもって手術が行うことができた。
これまでは多くの手術に追われていたが、手術件数や診察件数のような数字には現れてこない術後管理も私たちの重要な仕事である。口蓋裂患児は潜在的な合併疾患が多く注意しなくてはならないし、現地スタッフは口腔外科医であるため、手足の術後管理には慣れていない。「数字に現れる」手術件数よりも、合併症を起こさず安全にミッションを終えることを最優先に心がけなくてはならない。
さらに余裕ができたことで、患者家族との交流に時間を取れたことは大きい。患者の多くは先天的な形成異常や熱傷瘢痕の小児である。両親は、言葉もわからない、どこの誰かもわからない日本人に自分の子どもを託すのだから、術前術後はできるだけ患者やその家族と接する時間を持って、彼らの不安を取り除くことに努めたい。
また今回のミッションでは、ネピドー総合病院の口腔外科部長であるキンマウ医師より医師6名分の履歴書を託された。口腔外科医3名と麻酔科医3名が「昭和大学への留学を申請したい」とのことであった。このミッションの協力医師であるマンダレー総合病院形成外科医キンマーラー氏が、昨年まで私が勤める昭和大学に1年留学し成果を得て帰国したことがきっかけとなって、多くのミャンマー人医師が日本への留学を希望しているとのことであった。
ミャンマー政府の民主化政策が進むにつれ、多くの国際医療ボランティアチームがミャンマーにやってくるようにはなったが、逆にミャンマー人医師が外国に学びに出る機会は少ない。政府側が制限していることも影響しているが、受け入れる国や病院が少ないのも事実である。その中で我が母校は留学生受け入れ実績も豊富で体制も整っている。私には麻酔科や口腔外科に直接働きかけるような力もコネも持ち合わせていないが、6名の留学実現に向けてできる限り協力していきたいと考えている。
2013年よりミッションリーダーを務めていた医師が昨年退任されたため、今回のミッションから患者スクリーニング、手術の予定組み、術後ケアについて、私が中心となり現地スタッフと協同して行うことになった。今後のミッションリーダーとなる形成外科医は未定であるが、これまで興味はあっても活動に二の足を踏んでいた若手の日本人形成外科医やミャンマー人形成外科医・口腔外科医にも参加機会が増えることを切望している。「第2ステージの始まり」を実感したミッションであった。
スマイル作戦ミャンマー
活動地:ミャンマー・ネピドー総合病院
日程:2016年6月26日~7月2日
派遣ボランティア
森岡大地、江口智明(形成外科医)
阿久津麗香、本間康浩(麻酔科医)
石原恵(看護師)
手術と診察
診察人数:70名
手術人数:38名
手術を受けた患者の年齢区分(歳)
0~2(4人)、3~5(5人)、6~10(8人)、11~20(13人)、21~30(3人)31~40(2人)、41~50(3人)、51~60(0名)、61~(0人)、不明(0人)