スマイル作戦ミャンマー2015 現地レポート

形成外科手術を必要としながらもその機会に巡り合えない患者たちに手術を行うスマイル作戦。
今回で6回目となるミャンマーでのプロジェクトが11月30日~12月6日に同国ネピドーで実施されました。
今回の活動に参加した、麻酔科の阿久津麗香医師によるレポートです。

スマイル作戦ミャンマー2015 現地レポート
医療支援が必要な国の病院と言われたらどんな感じをイメージするでしょうか。原っぱの中の掘っ立て小屋で電気もガスもなかったりして、まずは朝から水汲みに行くとか…。最近、ミャンマーは日本の経済進出先としてよくテレビなどでとりあげられていますから、そこまでの環境を想像する人は少ないでしょうが、「日本の病院よりは遅れているのかなー」なんて想像する人は少なくないでしょう。今回のスマイル作戦を実施した首都のネピドー総合病院は1000床のベッドがある大病院であるからという理由もありますが、若干の古めかしさはあるもののほとんど日本の病院の設備と変わりありません。薬も注射器や針も十分に提供されました。多くの医師が在籍し、医師のレベルとしても日本と変わらない水準にあると感じました。

スマイル作戦ミャンマー2015 現地レポート
それでは、なぜミャンマーに医療支援が必要なのでしょうか。理由は医師数の絶対的不足があります。日本は人口10万に対して206人ですが、ミャンマーはたった30人です。その医師がネピドー、ヤンゴン、マンダレーといった大都市に集中している大病院に集まってしまっています。医師数が少ない場合、通常は内科や腹部外科といった科から医師が増えていくため、形成外科医や麻酔科医は非常に少ないことが予想されます。特に今回の医療支援で扱った口唇口蓋裂のような先天的な形成異常ややけどの手術を行うことができる外科医はまだいないようです。世界の医療団以外の様々な団体も頻繁に手術をしに来ていますが、まだ受けるべき手術を受けられていないこどもは先進国に比べると非常に多く、受けることができてもかなり大きくなってから受けることになる人も少なくありません。

スマイル作戦ミャンマー2015 現地レポート
1週間の間に現地の病院で行うことは術前診察、手術、麻酔、術後診察と、実は日本で行っていることと変わりありません。ただ、患者に英語を話せる人はいませんから、診察には現地の医師についてもらわないとできません。さらには普段ある薬がなかったり、道具がちょっと違ったりすることはよくありますが、それはあるもので解決するしかありません。もしまごついてしまったとしても、現地の医師や看護師が助けてくれます。自分たちの持ち込んだ道具や薬だけで診察、手術、麻酔ができるはずはなく、また手術室だけでなく、手術に使用した器具を洗浄したり滅菌したりするための洗い場や機械は、現地の病院のものを使わせてもらわないとなりません。医療支援とはいえ、現地の医師、看護師、洗浄や掃除などをしてくれる人々の協力なしにはこの活動は成り立たないもので、最も大切なのはお互いのコミュニュケーションといえます。

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われわれが医療支援で目指すものは手術が必要な子どもが1人もいなくなることではありません。もちろんそうなったらうれしいですが、口唇口蓋裂の赤ちゃんはある一定の割合で生まれてくるものですし、やけどやけがを完全に防ぐことはできません。最終目標は、自国で必要な手術が適切かつ安全に行われることです。そのために必要なことは現地の医師の教育です。形成外科医は手術の方法や術後管理を教え、麻酔科医は麻酔管理を教えます。しかしこのような医療支援において、支援団体が病院に関与することができるのはほんの1週間です。ほかの団体が来ていることもありますが、各団体に所属している外科医の手術方法や麻酔科医の管理方法はそれぞれ異なるため、教育方法として効率的とはいえません。医療の発展途上国で、どのように医療従事者を教育するかということは、これからの我々の課題といえます。それに加え、安全な手術や麻酔を提供することが、我々にひとまずできること、そして求められていることだと思います。このために日本での日々の仕事や学習から技術の維持、獲得に努め、発展途上国とはいえ、決してレベルの低いものを流出させないように努力していきたいと思います。

スマイル作戦ミャンマー2015 現地レポート

スマイル作戦ミャンマー


■活動地:ミャンマー ネピドー
■活動病院:ネピドー総合病院
■日程:2015年11月30日~12月6日
■派遣ボランティア:
森岡大地、大浦紀彦(形成外科医)
岡田朋子、阿久津麗香(麻酔科医)
川越昌子(看護師)

■診察と手術
診察人数:23名
手術人数:23名
年齢区分(歳):
0~2 (6人)、3~5 (3人)、6~10 (1人)、11~20 (4人)、21~30(4人)、31~40(3人)、41~50(1人)、51~60(1人)、61~(0人)、不明(0人)


*上から3番目の写真が阿久津麗香医師

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