世界の医療団イギリスより派遣されているナビル・マルティーニ医師は、MdMのクリニックで活動する3人の医師の1人。マルティーニ医師にキャンプでの日常について、話を聞きました。
朝の9時半にキャンプに到着すると、既に患者たちが診察を待っていました。混雑する時間帯にもなると、20名ほどの人が列をなします。「5時には診察を終えたいが、いつも帰り道で相談が来る。女性や子どもだとノーとは言えないね。」
マルティーニ医師が診る患者たちは、過酷な旅に耐えヨーロッパに辿り着いたものの、キャンプでも更なる苦難に直面しています。「母と子3人でくる、するとその全員が病気というケースも少なくない。」 冬は氷点下20度にもなるハルマンリ。ブロック塀でできた部屋に住み温水さえも出ない難民キャンプでは、多くの難民がインフルエンザに罹りました。石鹸とお湯がないことで、皮膚疾患にかかる難民も多く見られます。また山々を歩いてブルガリア国境を越えるため、骨折などの外傷を負ってやってくる人もいます。
ある日、クリニックを囲む人だかりを懸念したキャンプ内の警備員から、診察をもっとスピードアップするように言われました。 「何を言ってるんですか?たった2分の診察は、診察ではない。患者の様子や具合を正しく診て処置すること、それが医師の仕事です。」
長い1日が終わった後、疲れはあるが幸せな気分になると彼は話します。「患者が元気になれば、こちらもうれしい気分になるんだ。」
2月の終わり、ある20代のアフガニスタン人の男性が彼を訪ねてきました。暖をとるため、火を起こし手の甲全体にひどい火傷を負っていました。1週間の間、痛みに苦しみ、その日マルティーニ医師のところへやってきたのです。このまま放置されれば、両手とも壊疽していたでしょう。
マルティーニ医師は彼を病院に連れていき手当てを受けさせ、その後数週間、毎日、彼の包帯を変え続けました。 「この前のことだけど、、、感謝を伝えたかったのか、僕の手にキスしてくれたよ。」
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