なぜ住まうことから始める(ハウジング・ファースト)と回復(リカバリー)するのか ~世界と日本の現場から~ をテーマに、国内外からの講演者やモデレーター5名を招聘し、実際の取り組みや現場からの実践報告についてお話いただきました。ホームレス支援の現場においては、欧米では既に確立しているアプローチのひとつであるハウジング・ファーストですが、日本ではまだ馴染みが薄い支援モデルであるにも関わらず、精神科医、看護師、精神保健福祉士、社会福祉士、支援団体など支援現場に携わる皆様、行政関係者、ジャーナリストなど多くの方にご参加いただきました。
シンポジウムは、ガエル・オスタン世界の医療団理事長の挨拶にはじまり、13日に発生したパリの同時多発テロ事件を受け、犠牲者を慎んで黙祷が捧げられました。その後、第一部としてハウジング・ファーストが既に根付いているアメリカからアマンダ・ハリス氏、フランスからヴァンサン・ジェラール氏よりそれぞれの取り組みや変化などについて講演いただきました。続いて第二部として、国内の現場から鹿児島より鶴田啓洋氏、精神科医の伊藤順一郎氏にお話いただきました。共通して言えるのは、住居を提供するだけにとどまらず、住まいもサービスも当事者自らの意思で選択し、受け入れること、地域社会に根付いた支援、そして支援する側との信頼関係が重要であるということでした。最後のパネル・ディスカッションでは、べてぶくろ、ひだクリニックの向谷地宣明氏をファシリテーターに、登壇者全員によるディスカッションと質疑応答がなされました。
時間の都合上、質疑応答、パネル・ディスカッションの時間が短くなってしまったこと、ご出席いただきました皆様にお詫び申し上げます。
プログラム:
第1部 ハウジング・ファースト 世界の現場から
講演1:Amanda Harris氏
アメリカPathways to Housing DC 最高業務執行責任者
講演2:Vincent Girard氏
フランスのハウジング・ファースト・モデル実践者、精神科医
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第2部 ハウジング・ファースト 日本の現場から
講演1:鶴田 啓洋 氏
一般社団法人Saa・Ya代表理事・管理者、精神保健福祉士
講演2:伊藤 順一郎 氏
メンタルヘルス診療所しっぽふぁーれ院長
認定NPO法人地域精神保健福祉機構共同代表理事
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第3部 パネル・ディスカッション
ファシリテーター:
向谷地 宣明 氏 コミュニティーホーム べてぶくろ、ひだクリニック
アンケートで寄せられた出席者の感想や意見から、改めて皆様の関心の高さがうかがわれ、また概ね高評価を頂戴しましたこと、主催者、共催者一同大変うれしく思っており、今後も「ハウジング・ファースト」を更にホームレス支援活動に活かしていけるよう取り組んでまいりたいと思います。
出席された皆様には、多くの質問、ご意見をいただきましてありがとうございました。代表的な質問のみになりますが、こちらにて回答させていただきましたので、ご覧いただければ幸いに存じます。
1.ACTチームは何日に1回対象者を訪問しますか?
A:それぞれの希望や必要性に応じて毎日~1週間に1度など、人それぞれです。
2.ハウジング・ファーストで利用する住宅はホームレスの人たちのために建てられた施設や住宅ですか?
A:今回の登壇者の方々がハウジングファーストで使用するのは、市場にある一般住宅です。そのため地域に散在しているものを本人が自由に選びます。生活の場所の一極集中は排除の形でありソーシャル・インクルージョンと逆であると考えます。 Pathways to Housing(団体名)のハウジング・ファーストに書かれた本によると、1つの棟内にハウジングファーストの利用者が占める割合は20%以内であることと定義しています。
3.国交省や住宅局など、国や地方自治体の住宅政策に投げかける必要があると思いますが、いかがですか。
A:コメントをありがとうございます。効果的な働き方の具体的なあり方など、皆様にご助言やご協力をいただきながら是非取り組んで参りたいと思います。
4.高校生の私にできることがありますか?
A:高校生の方に関心を寄せて頂いたこと、とてもありがたく思います。
まずは、さまざまなボランティア現場を訪ねてみたり、今は「ホームレス」について書かれた記事や本がいろいろありますのでそれらをご覧になってみてはどうでしょうか。当事者の方の「声」を取材した動画などもお勧めします。 そして周りのご友人、先生、ご家族の方たちと話し合ってみてください。まずは知ること、ご自分の頭で考えることが大切だと思います。