©Nicolas Moulard
地中海で起きた惨事は余りに悲劇的すぎる。400人が1週前の日曜日に、700人がこの土曜日(2015年4月18日)に命を落とした。欧州当局が必要な措置を取る前に、あと、どれだけの人がこのような悲惨な環境下で命を落とせば良いのか?”文明のゆりかご”である”Mare Nostrum”(ラテン語で「地中海」、直訳すると”私たちの海”)を”墓場の海”にさせてはいけない。
世界の医療団はEUを構成する28の国に対し、自らの責任を果たし、中東やアフリカの危機的状況から逃げてくる何万の人々を救うための解決策を見出し、繰り返されるこの悲劇を終わらせること要求する。
貧困、飢餓、差別、暴力、戦争・紛争、自由な生活、自分の子どもたちへの将来への希望。いずれも、ある人を、ある家族をして、自国、近親者、そして過去の全てを投げ捨てさせる理由である。こうした男性、女性、子どもたちといった被害者のそれぞれに現実があり、悲劇があり、運命を塗り替えたいという意思があるのだ。
忘れてはならない、喜んで自国を捨てる人はいないということを。生き延びるため、貧しさから抜け出すため、自国では就けない仕事を見つけるため、トレーニングを受けるため、子どもたちに未来を拓くため、彼らは自国を捨てるのだ。より良い人生を願い、いつの日か成功の誇りとともに帰るために、自国を捨てるのだ。
世界の医療団フランスの理事長ティエリー・ブリゴは訴える。
「今日、多発しすぎる紛争から、戻る見込みもなく、逃げ出す人がどんどん増えている。こうした、あらゆる暴力から逃れる人々を、どうしてもっと大量に受け入れないのか?地中海では実のある救護活動が組織出来ない、と、欧州が私たちをして思い込ませようとする時、どうしたら憤らずにいられようか?欧州の指導者たちが与える無力という印象は深刻だ。問題の解決の鍵は、NGOが握っているのではない。欧州の指導者たちが言い逃れを続けるのであれば、UNHCRがその救護活動を組織することができるだろう。国連は、紛争地域における民間人保護の義務を負っているからだ。今、更なる保護、更なる連帯、更なる友愛が急務だ」
世界の医療団は移住する人々とともに活動をしている。彼らの元々の居場所(アフガニスタン、シリア、サハラ以南のアフリカ諸国…)から、移動するその道筋(トルコ、アルジェリア、サヘル…)で医療を提供するだけでなく、28の欧州加盟国が自国で施行する移民政策による、健康への悪影響についても訴え続けている。
移住とは人間としての権利である。理論的枠組み(パラディグム)を変えよう。移住を侵略と見做すことはやめよう。そして、現実に起こっているそれとして認識し、共に生きよう。すなわち、移住がチャンスである、ということだ。
世界の医療団はEUを構成する28の国に対し、自らの責任を果たし、中東やアフリカの危機的状況から逃げてくる何万の人々を救うための解決策を見出し、繰り返されるこの悲劇を終わらせること要求する。
写真:チエリ・ブリゴ(医師、世界の医療団フランス理事長)