私が活動させていただいているのは、各学年20人弱の単学級で、未就学時より同じ地域での付き合いがあり、学年を超えても顔見知った関係がある、アットホームな雰囲気の学校である。下校時も同じ方面の児童が自然とまとまり、集団で下校する姿が印象的であった。
震災から3年が経った現在の学校の様子は、一見落ち着いており、子どもたちの言動に目に見えるような震災の影響は感じられない。小規模な学校であり、教職員の目が行き届いていることも大きな問題が浮上せずに済んでいる一因だと思われた。一方で、全員ではないが、何人かの子どもはガラスバッジを着用しているなど、放射能に関する、語れない、語られない不安を抱えつつ、日常生活を送っている様子が伺えた。津波被害はある程度過去の出来事になっていても、原発事故の被害は現在進行形で感じられる地域である。
そうした状況の中で、子どもたちは他の地域の同年代の子どもたちと同様に、友人関係、いじめ、不登校、発達障害、家庭問題など、それぞれが様々な悩みや課題を抱えながら生活をしている。震災を切り口にした心のケアは大切であり、今後も必要になる場面が現れると思われたが、無理に思い出させたり、語らせるのではなく、話したい時に話せ、振り返りたい時に振り返ることができること、そうした機会をもてることがより大切だと感じた。
小規模な学校では、地域の人間関係も近く、自由に話しづらいこともありうる。そういった意味では、外部の人間ではあるが、継続的に関わることができる人が、支援を提供する意味があると感じた。また小学校という場では、スクールカウンセラーとの体験が、生まれてはじめて体験する”心の支援”である子どもも多いと思われ、これをきっかけに、子どもたちが今後のメンタルヘルスへの関心や、相談の仕方を学ぶ機会に繋げられたら良いと感じた。
また、震災から年月が経てばたつほど、震災以降にこの地域へ転入してくる子どもも増えてくる。転入生にとっては、その土地の気候、地域の文化、学校の規模などの差、引越しに伴う様々なストレスを経験すると思われる。他県より福島県に転入する児童は、それに加えて震災の被災地であることがなんらかの形で頭に浮かぶことが予想される。地域柄、幼少期から見知った関係が多い中で、転入生にとっては、経験や思いを共有できない点も出てくる。「友達と同じこと」を求めがちな小学生の時期には、そういった個別の思いは、なにかきっかけがなければ表現されにくく、児童のこころのうちに閉ざされがちになり、一人悩みを抱えてしまうことも予想できる。
震災の影響を直接的、間接的に受けている面、それ以外の面も含めて、子どもたちには長い目でのサポートが必要だと感じられる。
臨床心理士
浅井このみ