©MdM Germany

ウクライナ:ストレスと不安で押しつぶされそうな小さなこころを救いたい

たとえ戦争が終わっても、子どもたちの心に影響は長く残る


ロシアの侵攻から3年、ウクライナの子どもたちの多くは、もはや平和な生活を知りません。親も子どもも、絶え間のないストレスと不安の中で暮らしています。子どもたちはときに、怒りを爆発させたり、黙り込んだり、引きこもったりします。それは、戦争によって残された傷のほんの一部が、行動となって現れただけ。子どもたちの心は、奥深く傷ついているのです。
世界の医療団は、子どもたちの身体的な健康だけでなく、精神的な健康、さらには親の健康のためにも、子どもたちのメンタルヘルス強化に取り組んでいます。そこで使用しているのが、困難な状況に対処し、トラウマ的な経験を克服するのを助けるためにデザインされた犬のぬいぐるみ。少し悲しそうな表情は子どもたちの共感を呼び、大きな耳で子どもたちは涙を隠すことができます。
心理学の専門家の指導のもと、子どもたちはぬいぐるみとの時間を過ごします。このセラピーの効果は研究で証明されており、子どもたちを対象にしたグループセッションでも、よい反応が得られました。
「悲しいときは、このワンちゃんに話しかけるの」
「家が暗いときは、怖くないようにこの犬を連れて行くんだ」
保護者からも、空襲警報が発令されたとき、以前より楽に避難所に連れて行けるようになったという報告がありました。一見ささいなことのようですが、子どもたちに十分なケアができないことが多く、自身も精神的に追い詰められている保護者にとっては、大きな安心材料になります。子どもたちへの支援が大人である親をも助けることにつながっているのです。
戦争は、計り知れないほどの精神的トラウマをウクライナの人たちにもたらしました。たとえ戦争が終わったとしても、少なくとも戦後5年間は、メンタルヘルスケアの問題に戦争の影響が残ると予想されています。厳しい戦時下におかれたウクライナの人たちは、心身両面に、多くの支援を必要としています。




「私はこの国を、PTSD(外傷後ストレス障害)の国と呼んでいます」

心理学者のダン・ヒューメニーは、国内避難民の子どもたちと働くなかで、ウクライナの人たちが受けた精神的なダメージの大きさを感じ、「私はこの国を、PTSDの国と呼んでいます」と表現しました。
「子どもたちの受けているストレスが、長期的な障害に発展しないようにすることが非常に重要です」と、ダンは言います。爆撃から避難してきた最初の3日間は特に注意をはらって接し、子どもたちのその後の人生に悪い影響をもたらさないようにします。一度の爆撃に遭ったことが、長期にわたって影響する可能性があるのです。戦争は、命を奪い、身体を傷つけるだけでなく、心までむしばみます。
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*世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。
*世界の医療団は、受け取った寄附金を特定の支援プロジェクトのみに充てることなく、
頂戴した寄附の総額を支援活動全体に分配することを原則としています。


侵攻から3年経ったいま、
そしてこれからも、ウクライナに必要な支援


2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。この三年間で、686万人以上の人たちがウクライナを離れ、355万人以上の人たちが国内避難民となって故郷を後にすることを余儀なくされました(※2)。亡くなった民間人は1万2300人以上、そのうち650人は子どもです(※2)。これだけ多くの犠牲が、およそ3年の間に生じました。
世界の医療団は、侵攻前からウクライナ東部で医療支援活動を続けていました。親ロシア派勢力とウクライナ軍の間で深刻な衝突が発生し、内戦状態になっていたからです。ロシア侵攻後は緊急支援に切り替え、スタッフの安全を確保しながら、さらに活動を強化してきました。
多くの医療施設で物資が不足するなか、緊急医薬品や救命措置の薬、マタニティキット、緊急医療機器、基礎的医薬品、医療機器、縫合糸やガーゼといった消耗品やおむつなどの物資を届け、戦争の激化により病院までが爆撃の対象となり、医療インフラの多くが破壊された地域では、医師や助産師、心理学者、薬剤師などからなるチームが移動診療車で避難所を巡回して、医療を届けてきました。また、2023年からは、医療施設の改修の支援も行っています。
そして戦争が長引くに連れ、深刻化するメンタルケアに力を入れてきました。2022年4月には、メンタルヘルスケアのためにヘルプラインを立ち上げ、電話によるサポートを提供。医師やソーシャルワーカーがメンタルヘルスをサポートできるように研修を実施したり、メンタルヘルスをテーマにした情報を届けるイベントを開催したりするなど、さまざまなかたちで支援を続けています。
2024年5月からは、「トラウマを超えて」と題した3年間のプロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは特に子どもと若者に焦点を当て、患者のケアだけでなく、差別や孤立を防ぐために、地域のメンタルヘルス・ケア・サービスの改善を支援していきます。
たくさんの命が失われた3年間には、さらにたくさんの人たちが心に深い傷を負いました。その苦しみはいまもまだ続いています。


※1.UNHCR
※2.UNHCR


車内が診察室となる移動診療車で避難所をまわる ©Médicos del Mundo
この高齢の女性にとって、毎月来る世界の医療団の医師による診療が唯一の治療の機会 ©Till Mayer



< ご支援はこちらから >
ウクライナの未来、そして子どもたちの将来のために、
遠い日本からでもできることがあります。
世界の医療団は、現地の状況やニーズに合わせた医療を届け続け、
破壊された医療システムが正常化するようにサポートしてまいります。
3年もの戦争で深く傷ついているウクライナの人たちへ、
あたたかいご支援をお待ちしています。



*世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。
*世界の医療団は、受け取った寄附金を特定の支援プロジェクトのみに充てることなく、
頂戴した寄附の総額を支援活動全体に分配することを原則としています。





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