12月12日はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デー

―すべての人々が医療費の心配なく医療サービスを受けられるように

12月12日はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デーです。
UHCは「すべての人およびすべての地域社会が、財政の困難に遭うことなく必要な医療保健サービスを受けられること」を指します(WHO)。
2024年のテーマは「健康は政府の責任(Health: it’s on the government!)」

タンザニアからのメッセージ
UHCデーに寄せたタンザニアからのメッセージ

健康は誰もが生まれ持つ権利です。しかしながら、現在少なくとも45億人、世界人口の半分以上が、必要不可欠な医療サービスを受けることができません。また、過去20年間で経済的保護も徐々に悪化、20億人が医療費の自己負担により経済的困難を経験しています(1)。 経済的な理由で基本的な権利が阻害されてはなりません。国民が等しく権利を実現できるよう社会の仕組みを整える責務が政府にはあります。特に貧しい人や弱い立場にある人々が貧困や差別が理由で医療から疎外されることがあってはなりません。
世界の医療団は、世界各国で誰も取り残されることがないよう数々の医療支援を行っています。同時に、国や国際機関に対してすべての人が医療につながれるよう政策提言(アドボカシー)も行っています。

(1) Tracking universal health coverage 2023 global monitoring report

UHC2030への取り組み


UHCを推進する国際的な調整機関にUHC2030(本部スイス・ジュネーブ、世界保健機関(WHO)、世界銀行、経済協力開発機構(OECD)が所管)があります。UHC2030は国際機関や政府、市民社会(NGOなど)、民間企業などによる協働プラットフォームです。世界の医療団 日本の事務局長 米良彰子は、このUHC2030のNGOらで構成される「市民社会参画メカニズム」(CSEM)の諮問グループメンバーを2023年から務めています。他メンバーらとの調整や連携を中心になって担い、NGOが活動する現場の状況や人々の声を届け、各国に課題の解決に向けた政策を実施するよう促します。
2024年4月にUHC2030の2024-2027の戦略について議論する会議がジュネーブで開催され、米良も参加しました。会議では2030年にUHC達成をめざす進捗の遅れを踏まえ、各国政府のUHC実現に向けた進捗をどうモニタリングをしていくか、そして医療費の自己負担をどのように減らすことができるか、などの議論がなされました。UHCの政策には当事者の声を組み込むことが不可欠であることから、彼らの声を代弁できる市民社会の参画の重要性を訴えていくことを確認しました。
 
CSEMの会議
各国から多様な立場の人々が集まって開催されたCSEMの会議


WHOとの取り組み


2023年8月 にWHO市民社会委員会(WHO Civil Society Commission)が発足しました 。WHOが市民社会の役割の重要性を認め、市民社会からWHOに対して助言や提言を行う場として設置されたものです。世界の医療団もメンバーに入っています
さらに、2024年5月の世界保健総会(World Health Assembly)では「社会参加に関する決議(Social participation for universal health coverage, health and well-being)」が採択されました。 この決議により、人々、地域社会、市民社会が自らの健康と福祉に影響を与える決定に対して、より強い発言力を持つ道が開かれます。これらの機会をとらえて活動現場での人々の声や状況を伝え、政策提言につなげていきます。


日本政府とUHC


日本政府は、2024年4月の日本政府と世界銀行の会合イベントで、途上国のUHC達成のためのデータ整備や人材育成を行う世界的な拠点「UHCナレッジハブ」を日本に設置することを発表しました。さらに、翌5月の世界保健総会にて、UHCナレッジハブは低・中所得国の保健財政の強化等を目的に、WHOと世界銀行が連携し、各国の保健省と財務省の政策立案者の能力開発を支援すると発表。その取り組みの内容として、
・ UHCにかかわるデータの整備やグローバルな知見の収集・共有
・ 途上国の財務・保健当局者に対する保健財政に関する研修等を通じた人材育成
・ 少子高齢化の中で質の高いUHCを維持するための取組など、日本の知見・経験の提供
としています(2)
この仕組み自体は歓迎すべきものですが、厚労省と外務省、途上国の保健担当者間だけで取り組みが行われるのではなく、その準備段階、運営において、NGOの知見や提案も組み入れられるべきです。 また、途上国の人材研修はJICAなどもこれまで実施してきており、既存の枠組みとの差別化、また、招聘した人材が帰国後に学びを現場に活用できているかのモニタリングについても検討されるべきで、厚労省と外務省との対話の場において、これらの点について提案しています。
(2)https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001294198.pdf

近年、各国において防衛費の増加が保健財政を圧迫し、UHC実現のための政策への予算確保が課題になっています。しかし、健康は人びとが生まれながらにして持つ普遍的な権利です。すべての人が経済的な心配をすることなく医療にアクセスできるよう予算を確保し、達成のため法律を整備し、政策を実施するのが、政府の役割です。
2024年のUHCデーに、各国政府に対しその責務を果たすことを求めます。

市民社会との意見交換会にて
グローバルヘルス戦略のフォローアップに係る市民社会との意見交換会で、出席した内閣官房、厚労省、外務省、UNDP、JICAと保健分野にかかわるNGOの職員らと、UHC達成を誓う

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