危機発生から7年あまりが経過 “忘れられた難民危機”
2017年8月25日、ミャンマー・ラカイン州の少数民族、ロヒンギャの人々はミャンマー軍による容赦のない暴力により多くの命を奪われ、隣国バングラデシュを目指して逃れました。人々がたどり着いたコックスバザールの難民キャンプは、現在、100万人近くが暮らす、世界最大の規模となっています。難民キャンプは武装勢力の抗争、人身売買、違法薬物の取引など、人々が安全に暮らせる環境とは程遠い状況です。2024年7月から8月には、バングラデシュでも大規模なデモが発生、首相が辞任に追い込まれる事態が起きました。行政機能の回復や安定には一定の時間がかかるとみられています。
危機が発生してから7年あまり。いまだ帰還への道筋は立っておらず、仮のはずであった難民キャンプでの生活は長期化しています。一方、世界各地で紛争・災害などの人道危機が続発しており、ロヒンギャ難民危機は“忘れられた人道危機”といわれる通り、国際社会からの関心が薄くなっています。人々はキャンプ内で教育の機会を制限され、就労が許されず、生活のほとんどを支援に頼らざるを得ないなか、年々、国際社会からの援助額が減少してきているのが現状です。
このプロジェクトを支援する
*世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。
*世界の医療団は、受け取った寄附金を特定の支援プロジェクトのみに充てることなく、
頂戴した寄附の総額を支援活動全体に分配することを原則としています。
長期化する難民キャンプでの生活と人々の健康
このような現状は、人々の健康にも影響を与えています。限られた医療財源は感染症対策などに注力せざるを得ず、バングラデシュで死因の大きな割合を占める非感染性疾患(NCDs)*への対応は不十分です。難民キャンプでは長期間に及ぶ避難生活による精神的ストレスや治安の悪化、将来への不安などが、高血圧などのNCDsのリスクとなることがわかっています。さらに、それらの疾患の悪化が、うつ病などのメンタルヘルス疾患を引き起こすことも言われています。実際
に、難民キャンプにおける診療でもNCDsの治療薬と抗うつ薬を同時に処方するケースが増えています。
*非感染性疾患(non-communicable disease : NCDs)と は
循環器疾患、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患など、感染性ではない、不健康な食事や飲酒・喫煙などの生活習慣、また、このような習慣をもたせる貧困のような社会経済的要因によって引き起こされる予防可能な疾患を指す。
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世界の医療団の活動
幾重にも重なるストレスがメンタルヘルスをむしばむ要因に
難民キャンプ生活の長期化で増加するこころのケアのニーズ
長期化する難民キャンプ生活でNCDsへの対応はますます必要となってきています。世界の医療団は危機発生直後の2017年9月から難民キャンプで緊急医療支援を行ってきましたが、2021年からNCDsの予防対策事業を実施。「健康教育」と「医療従事者の能力向上」を二つの柱として活動を展 開 し て い ま す 。さ ら に 、こ こ ろ の ケ ア の ニ ー ズ の 高 ま り か ら 、2024年3月より、基礎的メンタルヘルス対応もはじめました。積極的に相手の話を聞く「傾聴」によって不安や悩みを軽減します。
「健康教育」と「医療従事者の能力向上」
先が見えないからこそ、自分たちでケアする方法を
世界の医療団は現地NGOとの協働のもと、ロヒンギャ難民や現地の人々からボランティアを採用、研修をして、健康教育を行っています。どういうときに医療機関にかかればいいのか、塩分や糖分、油などの適量、狭い空間でもできる運動方法など、誰もがわかるよう、イラストや図を使ったフリップで説明するなど、工夫して伝えています。本人だけでなく家族にも伝え、協力を促しています。また、ボランティアへのメンタルヘルスの基礎的研修や、医療機関のスタッフへの研修にも力を入れています。難民キャンプで暮らす人々が健康の維持・増進や医療サービスについての正しい知識を得ることは、将来の健康を自分たちの手で守ることにつながるのです。
事業担当からのメッセージ
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< ご支援はこちらから >
ロヒンギャ難民危機は終わりが見えませんが、 いつか自由に暮らせる日のために健康であることは欠かせません。 同じアジア地域で起こっているこの人道危機に、 どうか皆さまのお気持ちを寄せてください。 *世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。 ©MdM Japan |
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