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ラオス山岳地帯の村で行政と連携し、健康教育とワクチン接種を実施しました

世界の医療団の事務所のあるサムヌアから車で1時間ほど、山道を登って行ったところにあるホワイトゥーム村の集会所で、10月15日に健康教育、16日に子どもたちへのワクチン接種と、支援が必要な世帯への戸別訪問を実施しました。
ホワイトゥーム村はモン族の人々約70世帯500人が暮らしています。比較的サムノアの町に近いこともあって、電気と水道は通っているものの、電気代を支払えない家庭は利用できていません。主に農業で生計を立てていますが、農地は家から3キロ離れたところにあるなど遠く、作業に出てしまうと数日間もしくは日中のほとんどをそこで過ごすため、健康教育などの実施は農作業の繁忙期を避ける必要があります。また、軽い怪我や病気でも最寄りの県病院までバイクで1時間以上かけて行かなければなりません。
村の人々の健康の改善と医療機関の利用促進のため、世界の医療団は2022年から年に3回、健康教育等の機会を持っています。


ラオス北部の山岳地帯に位置するホワイトゥーム村
村の集会所での健康教育では、参加者は男女に分かれて席につき、真剣に話を聞いた



15日の集会は村の母子保健における課題を解決するために、活動の計画を立てることが目的でした。郡の保健局、内務局、教育局の担当者が参加し、村長や副村長、村落健康推進委員会の人々を中心に村人40名あまりが集まりました。最初に妊産婦と赤ちゃんのいる世帯を特定しようと村のマップ作りを開始。妊産婦と5歳未満児のいる家が色分けされ、他に障害のある人の家や貧困家庭など支援が必要な家も地図に書き込まれました。そのあと、郡の保健局の副局長から、さまざまな医療保健サービスを利用して村全体で人々の健康を改善していくためには、政府機関、医療従事者や村人々のオーナーシップと信頼関係を構築することや、お互いを尊敬することが欠かせないと伝えました。そして、活動の計画を立てるにあたり村の役割分担をするため、どのような役割があり、妊産婦と5歳未満児のためにどんなことができるかを話し合いました。健診や出産時に病院に連れていく、家事を手伝う、ワクチン接種をさせるなどの意見が出ました。ワクチン接種については副反応で熱が出るということを十分に説明してもらえなかったために、子どもが医療を受けたことで体調が悪化したと間違った理解をして病院を恐れ、また信用をなくし病院に行かなくなるケースもありました。世界の医療団の職員が、そうではないということをわかりやすく伝えたうえ、参加した郡保健局の職員に、このような説明不足や中途半端な保健サービスは村の人々との信頼関係を阻害すると注意を促しました。

また、世界の医療団は集会に集まった人々に、ワクチン接種や妊産婦検診に来ない家庭にどうやって来てもらうか、話し合いを進めるための双方向コミュニケーションの練習をしました。寸劇で、来ない家庭からちゃんと話を聞き取り、来なかったことを責めたり親を困らせないようにしたり、また来てもらうための話し合い例を見てもらいました。

午後は、ゴールが見えていたらそこにたどり着きやすいことを伝えるアクティビティや、誰も取り残さないように協力するアクティビティで、目標をそろえて力を合わせることの大切さを村の人々に体感してもらいました。


村の地図を作成。色分けして支援が必要な家庭を特定
ワクチン接種にこない家庭に対して来てもらうため、どう話し合いを進めるかの例を世界の医療団スタッフが風船を赤ちゃんに見立てた寸劇で披露
風船を「脆弱な立場にある人」に見立て、ひもを引っ張りあって「取りこぼさない」ようにするアクティビティ


16日は村の集会所で5歳未満児の身長と体重を計測して成長のモニタリングを行い、麻疹、おたふくかぜ、風疹、ポリオ、結核などのワクチンを5歳未満児21人に接種しました。とはいえ、5歳未満児は村に85人おり、今回郡の保健局が事前の連絡を忘れていたり、ワクチン接種が必要な5歳未満児の名前と数を把握していなかったことが判明。世界の医療団の職員が声をかけて参加を促し、ワクチン接種が必要な5歳未満児の正しい数を村から集めました。今後は連絡を徹底するなど、さらに高い接種率をめざします。

手際よくワクチンを接種していく
接種後には副反応や次回の接種スケジュールについて丁寧に説明する
身長と体重を計測し、成長に遅れがないかモニタリング



ワクチン接種と並行して、集会に来なかった世帯や支援が必要な世帯への戸別訪問も行いました。通常の戸別訪問では村落委員メンバーが各家庭の状態を把握し、状況により健康を守る方法や病院の利用を促します。今回、妊産婦のいる家庭のほかに、障害児のいる貧困家庭も訪問しました。そのうちの一つの家庭の女性は、働き手である夫を失い息子夫婦と同居して電気を分けてもらっています。12歳になる彼女の娘は、生まれて5ヶ月の時にポリオにかかり、その後遺症で体に麻痺が残りしゃべることもできません。当時、貧しかったためにワクチン接種を受けに病院まで行く費用がまかなえなかったといいます。「死ぬまでこの子の面倒をみる」と母親は言います。世界の医療団からは外部の支援組織を活用する提案をしました。今回のように村に出張してワクチン接種を実施することは、このような境遇の人々を生み出さないことにつながります。

支援が必要な家庭には戸別訪問し、健康を守るための情報を伝える
ワクチン接種を終えて帰宅する親子。母子健康手帳にはきちんと子どもの成長が記録されていた
結婚後10年たって初めて子どもを授かった夫婦。妊娠9ヶ月近くになるという。夫のバイクに乗せてもらい病院の健診には欠かさず毎月通っている


2日間の振り返りのミーティングでは村の人たちから「前回と比べてワクチン接種に大勢来たのはよかったが、怖がっている人は来ていない」「スケジュールどおりに進まないのはウィークポイント。私達一人ひとりに責任がある」「いつやるか事前の告知をしっかりすべき」「貧しい人たちがもっと救われる仕組みを考えないといけない」「郡保健局が村へ出張する時、ワクチン接種だけではなく妊産婦検診や家族計画などのサービスを提供してほしい」とさまざまな意見が出ました。今回の反省をもとに次回の活動計画立案の際にさらに改善するよう確認しあいました。

写真はすべてⒸMdM Japan

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