ラオス山岳地帯における医療アクセスへの壁
ラオス北東部、ベトナムとの国境に位置するフアパン県。標高1000メートル以上の山々に囲まれた山岳地帯に位置し、地理的要因により人々は多くの制約を受けてきました。
医療もそのひとつです。道路が未整備で交通の便が悪いために、医療が必要なときであっても人々の足は医療施設に向くことはありませんでした。また、患者を受け入れる医療の側にも課題がありました。医療施設には治療に必要な資機材が整っておらず、医療従事者の数も十分ではありません。医療従事者がいても専門的な知識がなく、治療を行えなかったり、判断を誤ったりなど、人々に信頼される医療とは程遠い状況にありました。
このプロジェクトを支援する
*世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。
*世界の医療団は、受け取った寄附金を特定の支援プロジェクトのみに充てることなく、
頂戴した寄附の総額を支援活動全体に分配することを原則としています。
妊娠・出産をきっかけに住民と医療をつなぐ
その結果、妊産婦の死亡率が高い*水準にあります。産後の出血、感染症、分娩時の合併症、危険な中絶などがあり、医療につながっていれば助かっていたはずでした。住民の90パーセント以上が農業で生計を立てるフアパン県では、妊娠中の女性たちも田畑に出て働きます。そのため、多忙で時間がなかったり、家族の理解が得られなかったりして、妊産婦健診を受ける女性はわずかでした。また、医療施設で分娩をする人の割合はラオス全体で65パーセントですが、世界の医療団の活動地であるフアパン県クアン郡では52パーセント、サムヌア郡にいたっては16パーセント**と、ラオスのなかでも特に低い地域であり、早急な改善が必要でした。
世界の医療団は、安全な出産と小児医療をきっかけに、住民の人々が「なにかあれば行く」ことができる、地域の医療を築くことを目指しています。プロジェクト開始から5年が経過しましたが、医療従事者の母子保健の知識・技術が向上し、妊産婦健診や医療施設での分娩する人の数も徐々に増えてきました。
*ラオス全体では10万人中132人(日本は4人)出典: UNICEF(2020年) **出典:フアパン県保健局、2021年11月
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世界の医療団の活動
妊産婦健診や施設内分娩で、安全な出産を
フアパン県では、妊産婦が医療にアクセスすることが困難な要因として、①決断の遅れ、②搬送・アクセスの遅れ、③適切な治療の遅れ、の3つの遅れがありました。世界の医療団は、これらの課題に多角的にアプローチし、妊産婦と生まれてくる子どもたちの命と健康を守る活動をしています。
①決断の遅れ
経済的な貧困や女性の社会的地位が低いこと、情報や知識の不足が原因で、医療施設に行かない。● 世界の医療団のアプローチ
住民への健康教育: 妊産婦健診、施設内分娩が安全な出産につながること、妊娠中の食事や過ごし方などについて啓発活動を行う。妊産婦本人だけでなく、家族にも参加してもらい、妊娠中の理解やサポートにつなげる。
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②搬送・アクセスの遅れ
道路のインフラが整っていない。交通手段がない。・住民への健康教育で、住民たちがお互いに助け合って病院へ行く工夫を伝える。
・医療従事者が定期的に村に行き、妊産婦健診、家族計画等の母子保健サービスを提供する。
③適切な治療の遅れ
医療従事者の数が少ないことや、医療技術が未熟医療施設の設備や治療に必要な医薬品が不十分。● 世界の医療団のアプローチ
母子保健のトレーナーを育成: 妊産婦健診や分娩、産後ケア、予防接種、小児(特に5歳未満児)診療の基礎的な知識を身につけたトレーナーを育成。そのトレーナーが村々の小病院のスタッフに研修を行い、知識を伝えていく。
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少数民族・モン族のパットさんと夫は、健康教育を受けたことをきっかけに妊産婦健診を受診。現在は2人の元気な子を育てています。“妊産婦健診ではエコーで赤ちゃんの状態を確認して、妊娠中の健康管理についてアドバイスをもらいました。一緒に健康教育を受けた夫が妊産婦健診の重要性を理解してくれて、健診のたびに夫が病院まで送ってくれました” |
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地域に根付き始めた医療を、地域の人々の手で担っていけるよう、 世界の医療団の活動の中心にあるのは、研修を重ねて知識やノウハウを伝えること。 引き続き、皆さまのあたたかいご支援をお願いいたします。 *世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。 ©MdM Japan |
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