世界の医療団とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage)

誰にでも健康を維持・増進させ、そのための医療保健サービスを利用する権利があります。これの保障の概念を「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage: UHC)」と呼びます。

世界の医療団はUHCを推進するための活動を世界中で行っています。これは平時に限りません。自然災害や紛争が発生した際の緊急時には医療施設破損、従事者の被災・避難、交通網の寸断や人々の不安・恐怖による施設へのアクセスの低下、資機材・薬剤のサプライチェーンの機能不全が起こります。こうした危機においてもなるべく多くの人々が従来の医療保健サービスを受けられるようにウクライナなどで巡回診療、医療資機材・薬剤の供給などの支援を行っています。

他に通常の状況ではラオスでは小児医療の基盤の構築と強化、バングラデシュではロヒンギャ難民キャンプ(※ただし、難民が置かれている状況は「通常」よりも「長引いた危機」と言えます)と周辺コミュニティでは非感染性疾患にかかる予防・管理についての啓発と診療所の能力向上支援を行っています。ただ、たとえばバングラデシュのコミュニティ診療所では人材、資機材・薬剤、情報管理などに改善の余地が大きくあり、容易ではありません。具体的には、計画通りの人材が配置されておらず、彼らに十分な知識・技術が伴わずに疲弊し、モチベーションが低下している、資機材管理が十全に行われていない、人々が薬剤を求めているにもかかわらず、これが供給されない、人材間の情報共有が不十分である、といった課題が見られます。私達の支援がこれらのギャップのすべてを埋めることはできませんが、最低限の診療の質や人々の診療所への信頼の向上を目指して、研修、資機材提供、モニタリングと助言などの支援を行っています。

UHCは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals (SDGs))」の目標3.8(すべての⼈々に対する財政保護、質の⾼い基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、及び安全で効果的、かつ質が⾼く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、UHCを達成する)や「誰一人取り残さない」との主旨に沿っています。9月には国連総会に合わせてハイレベル会合が開催されました。ただ、これの政治宣言は数値目標に乏しいと言われています。国際社会のさまざまな関係者間の駆け引きによって残念ながらこのような結果となったのだと思われますが、このままでは上述のバングラデシュのコミュニティ診療所や人々のように多くの人々が取り残されたままとなります。UHCを促進する調整機関UHC2030の2023年のテーマは、「すべての人に健康を: 行動の時(Health for All: Time for Action)」です。世界の医療団は実質的かつ現実的な目標をもって支援を継続します。

関連記事:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage:UHC)の取り組みについて

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