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ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクト

診療所見学ツアーで受診数も増え、住民とのコミュニケーションも活発に

ロヒンギャ難民キャンプのホストコミュニティで、住民を対象に、地域にある診療所への見学ツアーを開始しました。
これは、住民たちに診療所のサービスについて知ってもらい、積極的に活用してもらうためです。ホストコミュニティでは、住民のほとんどが診療所で提供されている保健医療サービスについて知らず、診療所の所在地さえ知らない人もいました。また、診療所の受診率の低さは、スタッフのモチベーションの低下や保健医療サービスの質の低下にもつながっています。特に、住民たちにとって深刻な問題となっている非感染性疾患(NCDs)は、早期発見と早期治療が有効で、継続した通院や正しい健康知識を身に着けて、生活習慣を変えていく必要があります。

見学ツアーは健康教育に参加した住民の中から希望者を募り、2023年はこれまでに10回実施し、110名が参加しました。ツアーでは、住民と診療所スタッフとの意見交換も行いました。
住民からは「診療時に血圧や血糖値を測ってほしい」「薬を出してほしい」などという要望が出ています。
薬を求める声は根強く出ていますが、バングラデシュでは公的な薬のサプライチェーンが機能しておらず、診療所ではNCDsの薬を提供することができません。患者は自己負担で大半の薬を手に入れなければならないのですが、NCDsについても抗生剤を希望するなど、薬への理解が十分でなく、診療所内にポスターを掲示するなどで理解を深めてもらうようにしています。
また、診療所では原則的に診療費は無料であるものの、薬剤、資機材費、運営予算など公的資金支援は少なく、診療所の中には私有地を寄贈して建設されているものがあったり、水道設備などが壊れたままになっていたり、盗難にあったりしている状態のものもあります。持続的に運営していくためには、患者から寄付を募らざるを得ないのですが、患者の経済状況によって額が異なり、そのことが不公平感につながっていたりしています。これに対してもポスターを掲示することにしました。
見学ツアーや健康教育の場などで、住民に丁寧に説明をしており、実際に、見学ツアーを実施するようになって、住民の受診も増えました。同時に、住民からのクレームなどを含めた要望も多く出るようになっています。それだけ住民と診療所の距離が近くなったと言えますが、住民の誤解をとき、理解を深めてもらうことが診療所の支援に必要とされています。

通常のかぜやインフルエンザ、新型コロナウィルスといった感染症と異なり、NCDsの進行はわかりにくく、かなり進んでから症状が現れることがあります。日本でも多くの人々にとって適切な健康診断受診、生活習慣の改善、適切な服薬が困難なところ、バングラデシュではこれらがさらに難しく、そもそも多くの人々が上記の背景によって基礎的な保健医療サービスを利用できないという現状です。世界ではすべての人々がこうしたサービスを享受できるようにする(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)ための努力を行おうとしており、9月に開催された国連総会に合わせたハイレベル会合でもこのことが確認されましたが、世界の医療団の活動はこうした努力の一端を担うものです。


参加者の声


私は糖尿病にかかっていますが、見学ツアーに参加して、この病気は継続して通院する必要があることがわかりました。そして、私の息子にも同じような症状が出ているので、検査してもらったところ、やはり糖尿病でした。今では二人で診療所で診てもらっています。

診療所見学ツアーで説明を受ける
左・右)見学ツアーでは住民たちと医療スタッフが意見交換。住民たちにとって自分たちの要望を伝える場になり、スタッフにとってはフィードバックを得る機会に

私有地を寄贈して建てられた診療所
診療所長の私有地を寄贈して建てられた診療所
住民たちにアンケートを実施
見学ツアーの参加者にはアンケートを実施。参加者の99%が診療所の印象が良くなったと答え、家族が病気になったら連れてきたいと回答


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