世界の医療団は、アドビ株式会社と専門学校HALとの産学連携プロジェクトを4月に開始し、9月に優れた作品の表彰式を行いました。このプロジェクトはアドビが提供するクリエイティブアプリ「Adobe Express 」を使って、イラストやグラフィックなどを学ぶHALの学生たちが、世界の医療団が抱える広報課題の解決に取り組むものです。
世界の医療団は、「Z世代に自分達の活動を伝える」「広報手段のデジタル化」をテーマに、インスタグラムのテンプレート制作、寄付チラシのオンライン化、団体紹介動画制作、ラオスの事業で使用するフリップチャートの制作と、4つの課題を提示。専門学校HAL(以下、HAL)の東京、名古屋、大阪の各校からグラフィックデザイン学科とイラスト学科の4年生 20チームがこのテーマに取り組みました。アドビ株式会社(以下、アドビ)から提供されたAdobe Expressは、画像やチラシ、動画などが簡単に制作できるアプリで、非営利団体に無償提供されており、今回の成果物を今後も活用することが可能です。
学生たちが取り組むにあたって、世界の医療団は、目的と制作にあたっての留意点、活動内容について詳細に伝えました。9月の審査結果発表会に向けて、学生たちは6月に中間発表、7月に成果物のプレゼンテーションを実施。プレゼンテーションは実際のビジネスの場で行われているコンペ形式で行われ、学生たちにとっては実践を積む機会になりました。また、デザインという専門スキルを通じて、社会貢献できることも学ぶ場になりました。
審査には、ラオスで健康教育の場で実際にフリップチャートを使用する現地職員も参加。識字率が低いラオスの山岳地帯では、わかりやすいイラストを使ったフリップチャートは大切な情報を伝える必需品です。学生たちは現地の暮らしや食事などを調査し、イラストで表現しました。
審査のポイントはデザイン性に加え、出した課題への理解の深さ、着眼点、ターゲットの分析力、運用のしやすさなどを総合的に評価しました。
表彰式はオンラインで開催され、1位から3位のほか、アドビ マーケティング賞、世界の医療団賞、ラオス賞、イラスト賞、Diversity and Inclusion賞を発表。それぞれに記念品が贈呈されました。
世界の医療団事務局長の米良からは「世界の動きに目を向け、気になる社会課題を見つけて欲しい」「自分の得意分野であるデザインの力で社会を変えられるということを知るきっかけにして欲しい」と伝えました。
HALの先生と生徒のメッセージ
HAL大阪校 瓦井克尚先生 これまで企業との連携は各校で何度か行っていましたが、HAL東京・名古屋・大阪の3校合同で、世界で医療支援を行うNGOや世界的に有名なアドビとの連携という大きなプロジェクトは初めてでした。普段の勉強はモニター越し、パソコン越しのことが多いのですが、いかに世界の医療団の活動を学生に身近なものとして認識してもらい、リアリティを伴った感じ方をしてもらうかということが課題でした。中間チェックでフィードバックをもらい最終化していく、というプロセスの中で、自分たちが目指しているものと、世界の医療団やアドビが求めているものとのずれをなくし、ブラッシュアップしていくことで、学生たちはニーズに沿って仕上げるという体験ができました。今回参加した4年生たちは、来年の春から社会人生活が始まります。企業やNPO法人と取り組めたリアルな仕事は大きな経験になりました。 今回のプロジェクトでは、いかに寄付につなげるか、運用面の幹となる部分まで考え、おそらくこれまで学生が考えたことがなかった現地と日本との結びつきについて考え、視野が広がったと思います。学生のうちに、自分が当事者になって海外に目を向ける貴重な機会が持てたことに、とても感謝しています。 |
---|
ラオス賞受賞 大阪Team5 リーダー岩本颯太さん ラオスについては、ほとんど知らなかったのですが、世界の医療団からの資料としての写真を見たり、WEBサイトでラオスの情報を集めました。制作にあたって一番苦労したのは、わかりやすさを求めたときに果たしてこのイラストでいいのか、という点でした。そんな中で参考にしたのは、教科書で使われるようなイラストテイストです。情報量を減らしながらわかりやすくするというのは国が違っても共通するのかな、と思いました。中間チェックでメインとなるキャラクターの方向性が問題なかったので、ポーズや料理など、現地の情報をもとにメンバーで手分けして仕上げていきました。初めてのリーダーでしたが、作品が出来上がったことにメンバーに感謝しかありません。 プレゼンテーションはとても緊張しましたが、伝えたいことはしっかり伝えられたと思います。仕上がったものを評価していただき、とてもうれしいですし、ラオスで使われるのが楽しみです。 今回の取り組みで世界との距離は意外に近いんだなあ、と肌で感じました。海の遠くのことだけど、できることはあるんだな、ということがわかりました。機会があればスキルを活かした社会貢献活動にぜひ関わらせていただきたいです。 |
---|