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10月10日は世界メンタルヘルスデー

メンタルヘルスに対する意識を高め、偏見をなくして正しい知識を普及させようと、世界精神保健連盟(WFMH)が1992年に10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めました。その後、世界保健機関(WHO)も協賛。正式な国際デー(国際記念日)になりました。

2023年のテーマは「メンタルヘルスは普遍的な人権である」です(https://www.who.int/campaigns/world-mental-health-day/2023)。誰でもどこにいても、健康的な精神状態でいられることは生まれながらにしてもつ「権利」なのです。しかし、世界では8人に1人が、身体的な健康や生活に影響のある精神状態を抱えているとされます。
メンタルヘルスケアは世界の医療団が重視する活動の一つ。日本国内を含め、世界各地でメンタルへルス・プロジェクトを展開しています。

世界の医療団が活動するウクライナでは、長引く戦争で、国民の半数以上が不安、緊張、気分の落ち込み、不眠、摂食障害、いらだち、怒り、疲労等のいずれかの症状に苦しんでおり、生活が困難になっています。愛する人を失い、暴力にさらされ、ケガや病気に苦しみ、家や家財道具、収入を失い、いつ終わるとも知れぬ戦争に、絶望、悲しみ、怒り、不安、精神的苦痛、無力感といった多くの負の感情を抱いています。しかし、ウクライナでは、人口の31%が、健康に影響を及ぼす精神的な困難や症状について支援を求めるほどとは考えておらず、わずか7%しか、メンタルヘルスの専門家と面談した経験がないといいます。ほとんどの人は、インターネット(39%)、愛する人とのコミュニケーションや表現(31%)、映画やテレビを見ること(29%)によって、自分自身で心理的ストレスに対処しようとしているそうです(※)。精神的な不調に気づいたら、誰もが気軽に専門家に相談できるようにし、メンタルヘルス治療をとりまく偏見や差別を減らすことが不可欠です。
戦争の最前線に近い地域では、人々の苦しみが大きい一方で、医療サービスが受けられないことが大きな問題となっています。
世界の医療団は、移動診療車によって前線に近い村に赴き、心理社会的支援サービスを提供しています。最初の頃は利用者も少なかったのですが、訪問の回数を重ねるにつれ、多くの人々が相談に訪れるようになりました。そのうちの一人、ユリヤ・ニコラエンコさんは言います。
「最初の面談では、私はまったく話すことができず、ただ泣いていました。世界の医療団の心理士との個人面談に参加してから数ヶ月がたちました。私の精神状態はかなり改善されました。心理カウンセラーは、私に新しい世界の捉え方を教えてくれました。そして今、私は自分の人生を歩む強い気持ちを手にしています」

ウクライナでのグループセッション

チェルニーヒウの国境地帯のシシキフカ村で、グループセッションを実施する移動診療チームの心理士 ⒸMdM Spain


戦争だけではありません。世界各地で頻発する自然災害も、人々に大きな苦痛をもたらします。
モロッコで支援を行う世界の医療団が連携するMS2協会会長タリク・オフキル医師は、次のように述べます。
「メンタルヘルスは背景に追いやられることが多いですが、危機の時には特に重要です。心理的トラウマは非常に一般的であり、人々の身体的および精神的健康に影響を与えるにもかかわらず、目に見えないことがよくあります。……心理的サポートは、トラウマの影響を克服し、影響を受けた人々が生活を再建するのを助けるために不可欠であるだけでなく、危機や短期的および中期的な影響に直面したときの回復力を高めるためにも不可欠です」
また、モロッコで最も多くの犠牲者を出したマラケシュ地域の医師会コンサルタントでメンタルヘルスの専門家ファイルーズ・イビヒさんは、
「心理的トラウマは、直接的な被害者だけでなく、間接的な被害者、つまり、出来事を目撃した人たち(看護スタッフ、救急隊員、消防士、ソーシャルワーカー、市民)にも影響を及ぼすことを覚えておくことが重要です。……私たちが極めてトラウマ的な出来事に直面するのは、それが予測不可能であり、大きな脅威だからです。とりわけ、私たちがコントロールすることのできない出来事だからです。この出来事を理解すること、説明すること、自分の人生をコントロールする感覚を取り戻すことは難しいのです。そして苦痛の兆候は気づかれなかったり、他の兆候より遅れて現れたりするため、注意して見守り続ける必要があります。この点で、地域社会の支援と愛する人との連帯は、苦痛を抑え、人々を支え、その兆候を見つけるのにも役立つので重要です」と話します。

心身ともに健やかな状態であることは私たちの権利。自分自身のこころの健康、そして身近なまわりの人々のこころの健康に、10月10日の「メンタルヘルスデー」をきっかけに意識を向けてみてはいかがでしょうか。



※ Gradus Research (2022) Mental health and attitudes of Ukrainians towards psychological assistance during the war.






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