ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート11

ラオスの医療保健教育課程において臨床実習の不足が指摘されている。医療従事者への教育課程が整備される以前の教育を受け、現在現場に出ているスタッフは臨床の機会にほとんど恵まれぬままに保健センターなどに配属されていることもある。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート11
世界の医療団が対象とするスクマ郡・ムンラパモク郡にしても、2012年までの公的医療保険政策が実質的に未導入の状態では、各施設にやってくる患者も多くはないため、配属されたスタッフの経験が日増しに積み上がっていく状態でもなく、また、自分の診察技術を確認したくても頼れるスーパーバイザーがいるような恵まれた環境にもないことが多い。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート11
このような中、世界の医療団は、2013年から5歳未満児の医療費減免制度導入を支援した成果もあってか、小児の受診数が増えてきたスクマ郡の病院で、5月15日・16日、早川小児科医の渡航にあわせ実地研修を企画した。研修参加者はスクマ病院・ムンラパモク病院のスタッフ、各ヘルスセンターのスタッフで、各スタッフは2日のうちいずれか一日に参加する。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート11
1日目は次々とやってくる患者と診察時間の調整に苦労したため、2日目はこの反省を活かし研修参加者を2部屋に分け、早川医師と木田看護師とが各部屋で監督する形式で診察をすすめた。グループごとに各研修参加者が交代で子どもを診察する。研修参加者にとっていつもと異なるのは、他の研修参加者の前で診察しているため、自分の知識と技術のフィードバックを受けられること。子どもに同伴する大人への質問が不足していないか、触診・聴診に抜けがないか、診断・処方、親への助言へとスムーズな流れができているかなど。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート11
一通り午前の診察が終わった後は、診察したケースをもとに研修医向けに質疑応答をした。 午後からは、パソコンのスクリーンで画像と音声教材を使用しながら知識の再確認をしたあと、全員でケーススタディを行った。

立っているだけでじわじわと汗をかくような湿り気のある暑さだったが、研修参加者にとっては、病院にやってくる子どもを診察しながら、今まで学んできた知識を再確認できたので、有意義な時間になったことだと思う。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート11

研修に参加した早川医師の感想


学ぶことの喜びは、日々の診療に対するモチベーション向上につながり、結果としてよりよい医療を提供できることになります。

今回の研修では、徐々にではありますがIMCIフォーム(※)の利用を通じた実践の成果か、スタッフの間で確実に小児に対する知識が広がり、子どもを診る目線にも変化がでてきていると感じました。実地研修中に行ったケーススタディでは、患者の訴えをもとに自分の知識を引き出し、自らの診察手技に生かそうとする努力がどのスタッフにもみられました。とはいえ、小児特有の疾病知識はさらに深める余地があるようでした。5歳未満患者が増えるに従い、IMCIの範囲にとどまらず、小児に特化した疾患知識がますます活かされる場面が増えると思われます。

世界の医療団が現地保健局と企画する研修を通じて、彼らが得た新たな知識を自分たちの医療現場での実践に活かし、一人でも多くの5歳未満児やその家族の力になっていただければと願っております。

(※)小児疾病管理システム:WHOやUNICEFが、医療資源の限られた地域で使用を推奨している5歳未満児疾病・栄養状態などの診断ツール。


(上から)
写真1 耳鏡の正しい使い方の復習
写真2 診察でも実践
写真3 午前診察の後の、研修参加者の質疑応答
写真4 ケーススタディ中、舌圧子を正しく使いみえるものを一緒に確認
写真5 研修参加者も子どもを相手にしているつもりで実践

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