第10回 バングラデシュ・スマイル作戦 現地レポート

南アジアに位置するバングラデシュ人民共和国は、日本の三分の一ほどの国土に日本よりも多い1億5千万人以上の人が住む国だ。世界に130カ国以上ある発展途上国のひとつ。日本に較べると国の整備はまだ不十分である。11月から2月はバングラデシュでは冬、といってもシャツの上に何か羽織っていれば快適に過ごせる。雨も少ない。
この国で年2回のスマイル作戦が始まって今回で10回目となる。

第10回 バングラデシュ・スマイル作戦 現地レポート
11月14日の朝、それぞれ東京、名古屋、大阪を発ったわれわれは香港で合流。香港ドラゴン航空に乗り換えてバングラデシュの首都ダッカの国際空港に到着するのはいつも夜になる。昨年までは空港で入国審査を待つ間、ずいぶん蚊に刺された記憶があるが、空港も整備が進み、売店や床もきれいになり、蚊も減った。

第10回 バングラデシュ・スマイル作戦 現地レポート空港には現地のスタッフがバン2台で迎えにきてくれている。夜でも渋滞の道を北西に走り、1時間ほどでダッカ郊外のサバールにあるGonoshasthaya Kendraのキャンパスに到着。寄宿舎の部屋にはいり温かいシャワーを浴びる。蚊帳をつって横になり、ヤモリの声を聞きながら、何故か落ち着いた気持ちになる。

活動の初日、11月15日は手術スケジュールの調整を行う。100名以上の手術希望の患者、そしてこれまでのミッションで行った手術の結果をみせに来てくれる人が集まる。「あなたは明日、あなたは明後日、…あなたは次回のミッションで」、残念ながら形成外科手術では治せないような疾患の方もときに治療を希望して来られる。「残念だけれども、あなたはこれこれという状態だから、他の病院を受診した方がいい」、説明をするとしきりに顔を横に傾ける。バングラデシュでは頷くのは縦ではなく横なのだ。今回は、今年4月にサバールで起きたビル崩壊事故の犠牲者も数名おり、このうち1名にも手術治療を行った。そしてこの日にフランスから麻酔科チームが到着し、明日からの手術に向けて手術室の整備が行われる。

第10回 バングラデシュ・スマイル作戦 現地レポート今回のミッションでは手術日は5日間設定された。この間に40名弱の手術が行われた。そして11月18日には前回に続き、ここGonoshasthaya Kendraで学ぶ医学生たちに形成外科の講義も行った。手術室にも時に多くの医学生が見学に来る。彼ら、彼女らの中から形成外科に興味を持ち、バングラデシュの次世代を担う優秀な形成外科医が誕生することを祈る。

今回も大きな事故もなく、日本で行うのと遜色のない形成外科手術ができた。手術中の停電や断水にも驚くことはなくなった。唇裂、口蓋裂、巨口症、合指症、尿道下裂、熱傷瘢痕。1回の手術では治せないものも多いが、継続してミッションを続けることで計画性を持った治療も行える。フランスの麻酔科チームともすっかり息が合い、信頼関係も申し分ない。そのうちこのチームの中にバングラデシュの医師達が参加し、彼らの力だけでバングラデシュの子供達に手術を施すことができるようになれば、これほど素晴らしいことはないだろう。

第10回スマイル作戦バングラデシュへ出発
11月21日には5日間で行ったすべての患者の診察をする。爾後の処置を現地の若いドクターに依頼し、Gonoshasthaya Kendraを発ったのは午後3時だった。雨の少ないこの季節、来たときと同じバン2台で埃っぽい街を抜ける。ダッカの市街地はひどい渋滞、大気汚染、そして多くのひと・ひと・ひと・・・。医療、教育、公衆衛生、社会保障。人々が文化的な生活を送るために必要なインフラをここバングラデシュで構築していくための、ほんのささやかな蝶の羽ばたきにでもなればと願う。

最後に、今回のミッションを支えて下さった多く方々からの寄付と、スタッフの努力に感謝いたします。

江口智明(形成外科医)



スマイル作戦 バングラデシュ


■活動地: バングラデシュ ダッカ市郊外

■日程: 2013年11月14日~11月22日

■派遣ボランティア:
与座聡、山田信幸、江口智明、吉村圭(形成外科医)
稲垣安沙、定宗純子、原田昌子(看護師)
ナディア・スマイル、フランソワ・ゴシア(麻酔科医)

■活動病院: ゴノシャスタヤ・ケンドラ大学病院


スマイル作戦について


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写真#4は左から、出発前、原田昌子看護師、吉村圭医師、与座聡医師、江口智明医師

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