私たち世界の医療団は、現在ウクライナで進行中の武力紛争を深く案じています。特に、医療施設への攻撃が増えていることに対し、憂慮に堪えません。民間人および民間インフラは戦闘の標的ではなく、傷つけられることがあってはなりません。私たちはこの紛争のすべての犠牲者とその遺族と連帯し、次のことを関係各位に訴えます。すぐに戦闘行為をやめ、人道回廊を開放し、紛争の被害を受けた地域への、すべての人道支援を妨げないでください。

私たちは国際人道法違反が続いていることに対し、強く非難します。昨今行われている医療施設や住宅地などの民間インフラへの攻撃は容認できるものではありません。WHO（世界保健機関）によると、ウクライナの病院や救急車への攻撃が18件確認されており、目撃者の証言によれば、さらに多くの攻撃が行われている疑いがあります。3月14日（水）にはウクライナ東部マリウポリの母子医療センターが攻撃を受け、深刻な被害が出ています。¹ 多くの民間人が医療サービスを受けられない状態です。医療施設に対する攻撃は、重大な人権侵害かつ国際人道法違反であり、戦争犯罪に相当します。民間人および民間インフラの保護は絶対的に優先されるべきです。民間人と人道支援スタッフは傷つけられることなく、民間の公共物、特に病院やインフラは保護されなくてはなりません。私たちは主要な民間インフラに対する攻撃を強く非難する国連安全保障理事会決議2573号（2021年）に賛同します。²

特に、キーウ、ハルキウ、マリウポリ、ドネツク、ルハンスクなどの包囲された都市や紛争地域に住む民間人は、人道支援を必要としています。OCHA（国連人道問題調整事務所）の推計によると、ウクライナ全土で、およそ600万人が人道的医療支援を必要としており、1,800万人が武力紛争の被害を受けています。³ 繰り返し、私たちはすべての当事者に求めます。深刻な被害を受けた人々に人道支援が安全に届くようにしてください。最低限、人道回廊と「沈黙の窓」を設置してください。

他の地域や近隣諸国へと武力紛争から逃れる人々が急増しています。国籍に関係なく誰もが安全に移住できるルートが確保されなくてはなりません。UNHCR（国連難民高等弁務官事務所）は、200万人以上の民間人がすでに国外へ退避しており、およそ180万人が国内避難民になっていると発表しています。⁴ この中には、激しい戦闘が行われている地域から逃れて近隣諸国に入国しようとする非ヨーロッパ市民に対し、国家当局が差別的な扱いをしているという報告があることに、私たちは深く憂慮しています。⁵ 安全だと見なされているあらゆる国は、紛争の被害を受けた地域住民に対し、開かれていなくてはなりません。ウクライナと直接国境を接していない国も含め、あらゆる国が例外ではありません。

すでにウクライナ東部で起こっていた人道危機は、今回の武力紛争で急速に国内全土に広まっており、国境を越えて広がっていく可能性があります。私たちは直ちに行動しなければなりません。紛争地域に取り残された人々、および、避難のため移動している人々に対し、基本的な必需品を提供しなければならないのです。すでに多くの人が、医療物資の不足や医療施設を利用できない状況の不利益を受けています。⁶ ウクライナは冬であり、特に避難民や紛争地域にいる人々が今すぐ必要としているのは、十分なシェルターに加えて、食料、公衆衛生、医療ケア、情報へのアクセスなどです。

避難民の多くは女性と少女であり、性と生殖に関する保健サービスや権利、またジェンダーに基づく暴力からの保護に特に焦点を当てる必要があります。

現地の市民団体は、紛争状況における人々のニーズを把握しています。そのため、政治的・人道的対応の計画を立てるにあたっては、彼らに相談し、参加してもらうことが必要です。

紛争地域には、民間インフラ、特に医療体制を構築し、民間人へのケアが強化されなければなりません。世界の医療団は、ウクライナや近隣諸国の自治体や医療機関を支援し、すべての人に医療を提供します。ウクライナ東部のルハンスク州とドネツク州の国境沿いに住む弱い立場にある人々に対して、約8年にわたり人道支援と保健医療サービスを提供しています。この間、約12万5,000件の相談に対応してきました。このような活動により、私たちは現地の人々に受け入れられており、今後も市民に最良の形でサービスを提供します。