運動が心の健康にも繋がることは以前から知られていますが、身体を動かすことを通じた気持の変化を実感し活用しているという方は意外と少ないのではないでしょうか。私たちの活動では、まず住民の方々自身が運動の効果を実感することを第一の目標として支援を行いつつ、自分達で健康づくりを行えるようになることを目指して活動してきました。(詳しくはレポート17に既述)
運動チームの活動は、2011年11月より、大槌町社会福祉協議会の協力を得て仮設集会所などで開催する運動教室をメインに定期化しました。仮設群は町内に48ヶ所あり、同施設に何度も足を運ぶには及びませんでしたが、多くの方に運動の効果を実感していただくことができたと感じています。
内容については常に試行錯誤でしたが、自分に合った運動のやり方を発見してもらえるよう、ヨガやボールを用いたリラクセーション運動、少しずつ難しくなっていくステップ運動(写真参照)など、様々な運動を紹介しました。遠方からも運動の専門家に参加してもらったり、地元の健康運動指導士とも活動を共にしたりと地道な縁で活動が広がっていくなか、約1年後の2012年10月には、高齢者や仮設住民を対象に見守りやその他活動を展開する支援者に対して研修を提供するに至りました。運動がこころとからだにもたらす効果が、運動とは異なる切り口で地域支援に携わる方々にも伝わった結果だと感じています。
研修は、彼らが既に携わっている地域活動のなかで運動を活用していけるようそれぞれのニーズに合わせて企画・実施しましたが、その中に、地域で介護予防などを念頭に定期的な運動教室を開催するボランティア、大槌町健康運動普及推進員への講習もありました。運動の具体的な方法のみならず、運動がこころの健康にも役立ち、コミュニケーションの手段としても有効であることをお伝えしました。
講習から半年後の4月初旬、その推進員が実施する運動教室に参加したところ、住民の皆さんとの実践のなかでリラクセーション運動やステップ運動を活用してくださっていました。自主練習などを経て実践に取り入れてくださったそうで、貸与した器具が使い込まれていたのが印象的でした。推進員さんからは教室終了後も、身体の動かし方の確認や指導方法について熱心に質問を頂きました。
運動チームの定期的な活動はここでひと段落したと考えていますが、今後は研修で運動チームのメッセージを受けとってくださった方々が、それぞれのスタイルで運動の場づくりを担い、復興に繋げて頂ければ嬉しく思います。
また、仮設住宅では、仮設集会所を管理する地域支援員の方々が中心となってラジオ体操を実施していると聞き、1カ所ですが見学させて頂きました。支援員の方によると、少しでも身体を動かすと気分が違うと参加者が感じているとのことでした。現地の方々は様々な面で困難を抱えながらも、コミュニティー作りに運動を活用するなど、着実に前へ進んでいるのだと感じることができました。
今後は、被災された皆さまが健康で明るく暮らせることを祈りながら、必要な時があればお手伝いできるよう細く長い繋がりを保ちたいと思います。
(公財)明治安田厚生事業団体力医学研究所
泉水宏臣、甲斐裕子、中原(権藤)雄一、永松俊哉
運動チーム(体力医学研究所)が実施した運動教室に参加して頂いた方の人数
◆2011年11月~2013年4月:住民など延べ約800名
(大槌町社会福祉協議会と開催した住民対象運動教室48ヶ所を含む)
◆共催者など支援者延べ約400名
(支援者を対象にした研修など13ヶ所を含む)
(毎月1~2回、1回につき2~3日の滞在中に4~6箇所で実施しました。)
体力医学研究所では、運動を心の健康に役立てるための研究を行っています
研究内容の紹介
体と心のコリをほぐす運動の紹介