報告会では、世界の医療団および共働してプロジェクトの運営に当たるボランティア団体のメンバーらが3年間の成果と課題を振り返り、活動のさらなる発展を誓い合いました。
東京プロジェクトは世界の医療団・日本が2010年4月から、池袋で炊き出しや健康・福祉相談などを行ってきたボランティア団体・TENOHASIや北海道浦河町で精神障害を抱えた人たちの地域活動拠点を運営する「浦河べてるの家」などとともに取り組んできた”ホームレス”支援活動です。1日の報告会では各団体で実際に活動に従事するメンバーらの報告とパネルディスカッションが行われ、TENOHASIの清野賢司事務局長は「国からの補助金も今年度末で終わる。順風満帆に見えるかもしれないが中はボロボロ」と訴えました。これに対し、プロジェクトコーディネーターを務める世界の医療団の中村あずさも「みな生活を抱えつつ、手さぐりでやっている」と応じました。
厚生労働省が2011年1月に実施した調査によれば、日本の”ホームレス”の数は1万人余り。たとえば、世界の医療団本部のあるフランスでは日本の半分程度の人口ながら、国立統計経済研究所(INSEE)の同時期の調査でも”ホームレス”は13万人余り、実際は20万人近く上るとみられているのに比べれば、一見深刻さもさほどではないように見えます。しかし、ヨーロッパ諸国と比べるともともと社会保障小国で、バブル崩壊後に”ホームレス”の数も急増、さらには市場にすべてをゆだねるのをよしとする新自由主義的政策が強まる中、弱き人たち、貧しき人たちはますます苦しい状況に追い込まれているのが実情です。
メトロの中で大声で「自分はSDF(ホームレス)である」と宣言し、「連帯」の名のもと堂々と(?)乗客たちにコインを乞うフランスの住所不定者たちと比べると、社会的寛容の度合いがますます小さくなっていっているように見える社会で物乞いをすることもなく、道行く人たちにまるでそこに存在しないかのように黙殺されがちなこの国の”ホームレス”たちを取り巻く環境はとても厳しいものになっているというべきでしょう。
世界の医療団では彼らの生をめぐるごくベーシックな状況の改善のため、今後も活動を展開していきます。
広報ボランティア:橋本 晃