8月29日(土)夕方、世界の医療団初のオンラインイベントとなる2019年度活動報告会を開催しました。
3月に予定していた対面での活動報告会でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を鑑みてやむを得ず中止とさせていただきました。
その後の緊急事態宣言を受け、世界の医療団の各活動も大きな影響を受けました。
移動の制限や情報が混乱する中で、できうる限りの感染予防策を取り入れながら、その時に最も必要な活動を続けてきました。
ウイルスが拡がっていたとしても、もし活動を止めてしまったら?医療サービスや情報から漏れてしまえば、健康をつなぐ術を失う人が出てきてしまうからです。
感染症危機の前からあった脆弱性はより大きくその人の生活に影響を及ぼし、それは時間が経つほどにより広がりを見せています。
活動を知ってもらうことで2020年の今の現場を想像し考えてもらおうと活動の合間を縫って、真夏の報告会の準備をしてきました。
たくさんの方にお申込みをいただき、当日を迎えました。
海外ともつなぐイベントにスタッフ全員が緊張を持って挑みましたが、なんとか無事に報告を終えることができたかと思っております。
ご参加いただいたみなさまからも、うれしいフィードバックをいただきました。
こうした機会を持つことの大切さを改めて感じ、ケアする医療活動に、伝える証言活動に今後も活かしてまいります。
ご参加いただきたみなさま、ご関心いただいたみなさま、ありがとうございました。
ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクトからは、新型コロナウイルス対応を中心とした活動について、環境も文化も全く異なる中でどう人々に感染症や健康のリスクや概念を理解してもらうことができるのか、あらゆる手段を探りながらも継続的にアプローチすることの重要性について報告いたしました。 ラオス小児医療強化プロジェクト、ラオスでなぜ小児医療を強化しなくてはならないのか、小児医療を直接届けるのではなく、小児医療をシステムを創る活動について、現地ラオスから報告しました。5歳未満時死亡率が高いラオスでの長期的な保健医療活動、住民と現地医療者との取り組みについてお話しさせていただきました。 世界の医療団日本ラオス事務所 メディカル・コーディネーター/医師 Siphone Sitthavongseng スリランカSRH(性と生殖に関する健康)プロジェクトはスリランカからの報告。格差が広がるスリランカで、セイロン紅茶で有名なヌワラエリヤの茶農園の労働者の大部分は植民地時代の移民であり女性であるということ、啓発活動や提言活動を通じ、最も教育や公的医療サービスが届きにくいとされる女性たちに保健医療サービスを届けています。 世界の医療団日本でもっとも古いプロジェクト「スマイル作戦」からは、歴史と実績を振り返りながら、ミッションの様子を症例を交えてお伝えしました。一度で終わらない手術や術後のケアも現地の医療者が引き継ぐことができるように、丁寧に現地医療者へ技術を伝えていきます。 薬品や器具を現地で手配するのもミッションの役割のひとつ、日本からの医療ボランティアと現地医療者がチームとなって、ミッションを進めていく様子を報告させていただきました。 国内の活動は「ハウジングファースト東京プロジェクト」、7団体が協働し「選択できる安心安全な住まい」から始まる支援アプローチを実践する取り組みをその始まりから現在の多岐多様な活動までお話しさせていただきました。地域で、社会で、自分自身の選択を尊重しながら暮らすことができるようにする取り組みは、国内外で注目を集めています。コロナ禍でも続けてきた活動についても報告させていただきました。 昨年の台風19号と豪雨災害による「福島いわき水害緊急支援」は、こころのケア活動を通じて培った緊急対応だからこその課題や災害対策のあり方をまとめ発表しました。避難所や被災住宅を一軒一軒継続し訪問すること、こまやかな支援活動で見えてきたのは地域での共通する課題でもありました。 問題を提起するだけでなくいかに今後に活かすことができるか、行政や被災地関係機関だけでなく住民とともに考える新しい災害対応が待たれています。 ――― 報告会でご質問いただいた「なぜいわき市の被災についての報道が少なかったのか?」につきまして、こちらで回答させていただきます 「阿武隈川が氾濫し、福島県内は中通りが壊滅的な被害を受けました。いわき市の河川は支流だったため、大きく報道にはされることが少なかったため」 ――― 2020年3月に9年にわたる活動を終えた「福島そうそうプロジェクト」。東日本大震災発生直後から個人で、その後MdMの一員として被災地で休むことなく活動を続けてきた精神科医の小綿一平医師にお話いただきました。 精神科医 小綿一平医師 1.患者様にとって大震災は過去のものでは無く「今(Now)」「ここ(Here)」の出来事です。 2.しかもそれは複合的であり重層的です。 3.更にひとりひとりを取り巻く環境が大きく異なるので、「復興」から置いていかれる方々を生み出します。はさみ状格差(鋏状格差)と言われている状況です。 4.また地域間格差もあります。同じ福島県内でも空間線量等の違いにより、避難指示解除の時期が大きく異なり、これからようやく帰還が叶う地域があります。帰還可能となっても家族間で年齢や立場によって意見が異なり溝を深めています。こうした地区の皆さんはこころの時間の歩みが遅くなっているのではないでしょうか。 福島県の震災関連自死者は他の県より高い状態が続いていました。戻りたくても戻れず、次々と選択肢を迫られ、この後ご発言戴く須藤様の著書でも言及されている「あいまいで宙ぶらりんな未来」(出典:「3・11と心の震災」蟻塚亮二・須藤康宏共著、大月書店)の中に置かれている方たちが大震災から10年目の今この時にいらっしゃるのです。 世界の医療団としての活動が終了した現在も、小綿医師は個人で活動を続けられています。 |
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