感染症の脅威が今、世界を揺るがしています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、世界中の人々の生活を脅かし、この数カ月で多くの人の命が奪われました。 国の医療体制や医療保険制度は、この危機に対処する準備はできていますか?
すべての人々にとって健康であることは権利であり、健康と医療への公平なアクセスは保健医療によって誰しもが保障されるはずのものです。国レベル、世界レベルにおける保健医療政策の根本的な在り方が問われ、すべての人の権利保障の享有が妨げられることのない国を越えた国際的枠組みへの挑戦が今、目の前に突きつけられています。
WHO(世界保健機関)によるパンデミック宣言が公式に表明されてからというもの、社会は難しい課題に直面しています。
国はすべての人が有する健康への権利、差別なき公平な医療へのアクセス、誰も置き去りにされることのない保健医療システムを確立できていますか?
必要十分な医療物資と医療機器、医療施設、専門の知識を持った医療スタッフ、必須医薬品を確保し公平かつ透明なガバナンスをもって、このパンデミックに対応できますか?
そもそも医療体制が脆弱な開発途上国で感染爆発が起きてしまったら?
ある国の社会保障制度が立ち行かなくなれば、民営化、事業化、資金不足、地域化などの理由を問わず、世界の保健医療システムに打撃を与えることになります。パンデミックに向き合い、すべての人への公平な医療アクセスと治療を保障するために、今、世界中の保健医療システムが困難と課題に直面しています。あらゆる国で都市、あるいは全土での封鎖措置、非常事態宣言や注意喚起が発令されている現状は、感染大流行とその事態に対応する医療体制の不整備の結果であるほかなりません。
社会的、文化的、法的な要因背景によって、平時から保健医療制度から疎外されやすい難民、移民、ホームレス状態にある人、受刑者、薬物使用者などの人々は、公衆衛生危機においては更に脆弱な環境に晒されます。公的医療、公衆衛生サービスから疎外されている人たちは、症状が重篤になるまで治療さえも受けることが出来ず、時に生命にも関わる事態に陥ります。スティグマが横行し医療システムそのものが混乱すれば、社会的弱者は保健医療からも疎外され社会的孤立に追いやられる、社会的孤立は感染リスクを高めることにもつながります。更に、手洗いなどの予防法への注意喚起が促されている状況下において、その実践が難しい場合、身体的、精神的、社会的不安は計り知れないものがあるのです。また、社会的、文化的なジェンダー概念、役割、関係性は、感染、曝露、治療すべての面で、人々の脆弱性に影響をもたらします。
私たちが最も懸念するのは、紛争や混乱などにより保健医療体制が既に弱体化される環境下でのパンデミックの発生です。今も世界中の難民、避難民が、長期にわたり暴力に晒され、保健医療アクセスのない密集した場所で暮らしています。人道危機下にある地で感染拡大が発生する事態になれば、医療物資や人材確保に甚大な影響をもたらすことになります。
徹底した公衆衛生システムは、この世界的な感染症の脅威の前にも有効であることを、このCOVID-19危機から学びました。同時に、場所、政治、法的状況の一切に関わらず、世界中の誰しもが健康への権利と医療アクセスを享有する、そうであるべきはずのユニバーサルヘルスケアのあり方が、世界的な医療危機に直面する今、問われています。
-人権と医療を守るために- 世界の医療団からの提言 |
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今、世界中で必要としているのは、すべての人がアクセス可能な保健医療システム、医療における国際的な連帯の仕組み。保健医療のもと公衆衛生対策が届かない人がどこかにいるならば、感染症の脅威に立ち向かうことはできない。