©Martin COURCIER

アフリカ 飢餓ベルト『サヘル』 止まらない砂漠化 紛争が強いる人口移動 飢餓1,500万人超

アフリカ 飢餓ベルト『サヘル』 止まらない砂漠化 紛争が強いる人口移動 飢餓1,500万人超

アフリカ 飢餓ベルト『サヘル』 止まらない砂漠化 紛争が強いる人口移動 飢餓1,500万人超
©Martin COURCIER

気候と土壌 : 環境に起因する元来の貧しさ


サヘルはアフリカ大陸のサハラ砂漠の南に東西に広がる帯状の地域で、南の熱帯アフリカと北のサハラ砂漠の境となる一帯を指します。半乾燥の気候で、不安定かつ限定的な降雨量や肥沃性の高くない土壌は元来、農業用地として適しているとは言いがたく、近年では砂漠化が進んでおり、安定した収穫は望めません。

人々の生活の質や発展の程度を示す指標である「人間開発指数2011」(187カ国中)では、ニジェール186位、マリ175位、ブルキナファソ181位、チャド183位、セネガル155位、モーリタニア159位となっており、サヘルに位置する国々が直面する地域的な開発の遅れは明らかです。実際、サヘルは「飢餓ベルト」とも呼ばれるほど、その地域に位置する国々は、慢性的な食料不足に苦しんでいます。


サヘルが直面する医療に関する共通の課題


– 世界的に見ても最も悪い健康、特に母子保健に関する指標
– 限られた医療アクセスと脆弱な医療システム
– 繰り返す栄養失調
– マラリアや脳膜炎など感染症の蔓延の繰り返しと対処の不足

世界の医療団は、2006年からニジェールのケイタ地区で、5歳未満の乳幼児と妊婦を対象としたプライマリヘルスケアプロジェクトを実施しています。これはニジェール政府が同じく2006年から施行している医療無料化政策と供に始まり、実効性が大変高く評価されています。ニジェールでのプロジェクトを継続しながら、サヘルという土地が地域として抱える共通の問題に着目し、ブルキナファソ北部のジボ、マリのコロでも同様のプロジェクトを実施し、サヘル地域の住民を対象とした国境を越えたプロジェクトを展開してきました。

アフリカ 飢餓ベルト『サヘル』 止まらない砂漠化 紛争が強いる人口移動 飢餓1,500万人超
©Martin COURCIER

これまでの具体的な活動内容


– 診療所、保健所、移動医療チームなどによる医療支援
– 地域の医療従事者の育成
– 各国政府や国際社会への働きかけを通じ、この地域での安定した医療システムの構築を実現する


アフリカ 飢餓ベルト『サヘル』 止まらない砂漠化 紛争が強いる人口移動 飢餓1,500万人超
©Martin COURCIER

急速な状況の悪化  - 食糧不足・栄養失調


2012年1月17日にマリ北部で勃発した紛争はサヘルの状況を更に悪化させました。国連によるとマリ国内の避難民は、5月中旬時点で既に15万人以上に達し、隣接諸国へのマリ難民の流入は未だに止まりません。受入れは近隣諸国にとっては大きな負担となっており、食糧不足と栄養失調をより一層加速させています。紛争に起因したマリ難民の移動は、ただでさえ慢性的な食糧不足のサヘル地域に食糧価格の高騰をもたらし、食糧が行き渡らない状況は危機的で、栄養失調率のこれまでにないほどの急激な上昇を招いています。ニジェールでは昨年時点の国の調査で500万人以上の人が食糧不安の中にあるという状況下で、紛争後、ニジェールへ逃げ込んだマリ難民は、数カ月間で3万5千人近くに及び、憂慮すべき状況の更なる悪化を招いています。

世界の医療団はそもそもこのように逼迫した状況にあるサヘルで、これまでも、ニジェール、マリ、ブルキナファソに亘り、国境を越えた医療支援活動「サヘルプロジェクト」を展開してきました。しかし事態がこれまでになく悪化している今、緊急支援対策に着手し、支援の手をより一層強めています。


アフリカ 飢餓ベルト『サヘル』 止まらない砂漠化 紛争が強いる人口移動 飢餓1,500万人超
©Martin COURCIER

2012年の急務課題


緊急事態を受け、2012年4月から12月までの9カ月間に亘り、22カ所の地域で追加の栄養不良の改善対策を実施しています。実施にあたり、以下の人材を追加投入し、活動範囲と活動内容を大きく拡充しています。

- 8名の看護師、8名の栄養士、2名の衛生士、2名の調理師を追加
- 妊産婦と栄養失調児を持つ母親に対するカウンセリングを充実するため5名の助産師を追加  

「移動医療チームを拡充し、医療物資と人材の運搬の仕組みを急速に強化することを通し、地域の保健所、及び、病院の機能を回復させることが急務の課題です。感染症予防対策を強化するためには、チームを拡大し、重篤患者の病院への収容など、更なる資金の投入が必要です。」と、世界の医療団のサヘル担当者イザベル・ジュリアンはこの地域の危機的な状況と資金の必要性を訴えています。

2012年4月から12月までの9カ月間の活動を実施するためには、

– 国外からの人材派遣       約975万円
– サヘル地域内の人材の確保  約2,940万円
– 医薬品の確保           約3,000万円
               計 約6,915万円

の資金が必要であり、まだ資金の目途が十分には立っておらず、サヘルを取り巻く状況は依然危機的です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新記事

参加する

世界の医療団は皆様からの寄付・
ボランティアに支えられています。