● 世界の医療団は、ギリシャへと逃れようとする難民への暴力と政治利用、そして島々のレセプションセンターの過密な環境を非難する
● 移動経路にあたるトルコでも、難民は水、食料、医療にアクセスできず、また、更に厳しい状況下にあるのは子どもたち
2020年2月末、トルコがシリア北西部での戦闘による爆撃から逃れた推定100万人もの人たちに欧州への国境を開放したことから、今再び難民を取り巻く状況が悪化しています。苦境にある人々を政治利用しEUやギリシャへ圧力をかけるトルコ政府、庇護する権利を放棄したギリシャ当局、遵守されなければならないはずの国際条約の侵害を黙認するEU。
何が起きているのか?
難民申請を差し止めたギリシャ政府の亡命抑制行為は、非人道的で国際法違反であり、難民に命の危険を及ぼすものであり、いずれ国際社会からの制裁を受けることになるでしょう。最近の取り決めによって、欧州内もしくは本国への送還が事実上可能となっています。これはジュネーヴ四条約(戦争犠牲者保護条約)で定められた被保護者の基本的権利を侵害する行為です。
世界の医療団ギリシャのEugenia Thanou
「この決議は早急に撤回されなければなりません。身の安全を計ることができない場所に人々を送還することはあってはならない」
結果的に、欧州との国境沿いに避難していた難民が攻撃され、非人道的な扱いを受けています。たとえ、彼らがギリシャへの入国を希望したとしても、受け入れられることはありませんでした。
難民の多くが紛争暴力が激化するシリア北部からの避難民、また、ソマリア、スーダン、アフガニスタン、イランなどの国からの難民も地中海沿岸に到着しています。
トルコでは、難民は15日ごとに自分の居場所を報告する義務があり、安全な生活や移動をするのがほぼ不可能な状態にあります。
「戦争から逃げた人々に対してこのような扱いをすることは、人間性を疑うものであり、今まさに難民たちが乗るボートで起きていることは、まさに人の存在そのものが人類間で問われているのか、そのようにしか見えません」とThanouは話します。
ギリシャでの混乱
軍、警察、市民による難民および支援団体に対する過激的行為が勃発する事態を深く憂慮します。
● 連帯へのイニシアティブを否定し、憎悪をあおることは無責任かつ危険
恐怖や不安を伴う混乱や風潮は、現実的に対処することなく、社会全体に深刻な影響を与えます。
欧州委員会(European Commission )が難民対応の盾としていたレトリックは、現在となっては通用しません。喫緊のギリシャやその他EU諸国に滞留する難民申請者の保護と第三国定住のための公正かつ合理的な体制整備が求められます。
その実現までの間、ギリシャ沖に到着する人々と島の人口過多な難民受け入れ施設に留まる人々、それぞれの人道的ニーズに取り組むことが急務です。特に未成年者については、希望者を他ヨーロッパ諸国で受け入れること、また受け入れ施設の混雑緩和を優先的に実行されなければなりません。
トルコのエディルネなどギリシャ国境に近い地域では、避難民が一切の保護もなしに路上で眠っています。非公式な不安定な場所で過ごす彼らは、緊急時であっても治療を受けることも薬を手にすることもできず、また食料や安全な飲料水も確保することができません。人道支援、特に子どもたちには緊急の支援が必要です。
世界の医療団は、30の組織、団体とともに、これら懸念と要請事項をまとめた書簡をギリシャ政府および欧州連合あてに提出しました。
この人道危機がおよぶシリアからトルコ、ギリシャにおいて、世界の医療団は、現在も積極的な人道医療支援活動を展開しています。