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ラオス小児医療強化プロジェクト: 現地活動(医療スタッフ能力向上)レポートVol. 1-5 臨床スーパービジョン

世界の医療団は、対象地のヘルスセンターや郡病院スタッフ、県病院スタッフによる子どもの診療の質を高めるため、2017年から*IMNCI研修 [現地活動(医療スタッフ能力向上)レポート Vol.1参照]、2018年からポケットブック研修 [現地活動(医療スタッフ能力向上)レポートVol. 1-4参照]を毎年実施しています。
*IMCI(Integrated Management of Childhood Illness: 小児疾病統合管理)

IMNCI研修
IMNCI研修:人形を使って実践中
これらの研修は、県病院や郡病院に参加者を集めて行います。そして、この集合型研修の成果は、ヘルスセンターや郡病院スタッフが自分たちの施設で実践していくことにあります。そのため、集合型研修の後は、施設訪問型のスーパービジョンを行い、研修で習得した技術や知識が活かされているか、定着しているかどうかを定期的に確認することが重要です。



中央保健省やラオス小児医療協会では、長らくこの臨床スーパービジョンの在り方が検討され、スーパービジョンの際にスーパーバイザーが使用するツール(チェックリスト仕様のフォーム)もアップデートされてきました。しかし、県・郡レベルでは、スーパーバイザーの育成が遅れ、各医療施設でスーパーバイザーによってツールが導入される間もなく、国の保健政策改訂とともにツールがアップデートされるなど、なかなか議論・理論と現場実践が伴わない状況が目立ちました。

世界の医療団は、診療技術(臨床)、なかでもIMNCIが重きを置く肺炎や下痢の診断に注力していますが、県・郡保健局は施設の衛生状態など、異なるアングルからのスーパービジョンなども複数扱っています。
本プロジェクトでは、2017年から研修実施の支援をすると同時に、臨床スーパービジョンの導入にも着手しました。しかし、複数あるスーパービジョンを整理して、臨床スーパービジョンの目的と手法を明らかにし、スーパーバイザーの育成も行う、これはなかなか容易なことではなく、2018年までは対象施設のうち数か所の施設で実施するにとどまっていました。
しかし、2019年6月、ようやく対象2郡の全施設で定期的なスーパービジョンを開始することができました。

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ヘルスセンタースーパービジョン:診察記録帳を見ながら、ピックアップした診察ケースの振り返りを行っています

サポーティブ・スーパービジョンとも呼ばれる現場監督は、チェックリストをもとにスコアを付けることではなく、スコアが低かった原因は何か、スーパーバイズされるスタッフが現場で困った場面は何か、などを丁寧に聞き取り、今後どうしていけばよいのかを話し合うことを重視しています。
世界の医療団は3年間かけてこういったスーパーバイザーのフィードバック能力の養成に取り組んできました。

今回、全ヘルスセンターで郡病院スタッフがスーパービジョンを終えた後、全ヘルスセンタースタッフと郡病院スタッフ、県保健局、世界の医療団スタッフで結果をみながら振り返りを行いました。多くのヘルスセンターで共通して改善が必要な点などを拾い上げ、次のスーパービジョンまでの努力目標などを話し合いました。
その会合中に、ヘルスセンタースタッフからあるコメントがありました。それは、郡病院スタッフによる臨床スーパービジョンは、他のスーパービジョンとは異なり、フィードバックが多く、その場で学べるから役に立つ、との内容でした。

Pocketbook研修
ポケットブック研修:国立病院から招へいしたトレーナー(人形を持つ女性)
世界の医療団(MdM)が活動を開始する前は、「子どもの診療に関して特別な卒前学習をしたことも、卒後研修を受けたこともほとんどない」と言っていた郡病院スタッフがヘルスセンタースタッフから受けた評価です。
MdMスタッフは、ヘルスセンタースタッフのこの感想に郡病院スタッフが頼りがいのある存在になりつつあることを実感しました。

2019年は、今年に入って改訂されたIMNCI研修のトレーナー研修を、県・郡病院スタッフを対象に、国立病院のトレーナーを招へいして再度実施しました。この受講者は今後ヘルスセンターや新しく郡病院に配属されたスタッフにIMNCI研修を提供することになります。

ヘルスセンタースタッフからの評価は、誰よりも郡病院スタッフに自分たちの成長の実感をもたらし、継続してIMNCI研修やスーパービジョンを実施していく自信につながったと思います。


*本事業は事業資金の多くを外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を受け、2017年2月より活動を展開しています。
*これまでの「ラオス小児医療強化プロジェクト」活動記事はこちら

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