世界の医療団は、社会的弱者の保護を推し進める具体的な対策、とりわけ世界規模の医療費保障制度を実現する上でG20のリーダーたちのイニシャティブに期待を寄せたが、会議の最後に示された合意声明は我々の期待に反するものだった。
会議の最終声明を読むと確かに社会的保護の基盤強化に関する意図が盛り込まれている。しかしながら、対象がG20サミットの参加国に限られている上、実現への具体的な方策、そのロードマップ、政府の役割等は何も示されていない。「唯の意思宣言に終わってしまい、政治的関心を呼ぶまでに至らなかった」とニコラ ギアール(アドボカシー活動担当)は残念がる。
実際、G20会議は雇用問題でハイレベルなワーキンググループを結成する合意に達したにも係わらず、社会的弱者保護の問題においては同様のワーキンググループ結成の合意には至らず、我々にとって非常に残念な結果に終わった。9月に開催された準備委員会での決議文の内容とは裏腹に、最終的な声明文では、社会的保護に関するノウハウを共有するネットワークづくりの意思表示さえも欠如していた。
MDM理事長ピエール シヴィニョンは、今回のG20サミットは失敗だったとの評価を下した。「現在直面する問題は経済や金融問題だけではない、社会問題でもあるのだ」と。社会福祉や医療費保障制度が効果を挙げている国々の場合、昨今の危機による衝撃にも比較的柔軟に対応している事が伺える。従ってG20サミット会議が社会問題に何故もっと大きなエネルギーを費やさなかったのか、理解に苦しむ。そこで我々は、会議の声明文が唯の宣言に終わらないよう監視の目を光らせ続けることが重要だろう。
ここ数カ月のあいだ、世界の医療団は独自のキャンペーンを通じてG20サミットのリーダーたちに訴え続けて来た。キャッチフレーズ「医療は贅沢ではない、医療費の全額保障は全ての最貧困層に適用されるべきである」と。