ギリシアでは、バルカン半島・中東・アフリカ・アジアなどを出身地とする約40万人もの移民が、違法状態で生活しているといわれている。経済危機を経験する中で、移民・亡命申請をしている人々に対する攻撃・暴力的な取り締まりも増えており、人権侵害のひろがりが懸念されている。
世界の医療団は、医療処置を必要としている移民の強制送還や逮捕に抗議し、移民の健康状態の向上がなされるよう活動を行っている。
現在ギリシアに駐在する世界の医療団のスタッフは、パトラス(Patras)やイグメニツァ(Igoumenitsa)といった町で、人道的な危機の一歩手前ともいえる状態に、不安を抱えながら直面している。ギリシアでは、管理が難しくなっている移民の問題への対応として、政府に亡命を求めたり違法状態でギリシア国土に滞在していたりする人々に対する、恣意的な逮捕が続いている。
しかし、この中には最低限の医療サービスも受けられず、世界の医療団の医療支援を受けている人たちも多い。移民問題に対する対応は、例外なしの逮捕・本国への強制送還とは違った方法でとられることも可能であると、世界の医療団は主張している。
ギリシアの北西に位置しているイグメニツァでは、移民の排斥や、港に近い場所に設置された仮設キャンプの取り壊しが行われているが、彼らの住む場所や、亡命申請といった本質的な問題は何も解決されていないままである。これは、2年以上も続いている人道的な危機の状態を、悪化させる政策でしかない。
多くの違法状態で生活する移民や、亡命申請をしている人々は、イグメニツァの山の頂上付近で住むことを強いられており、世界の医療団の移動する活動チームへとアクセスすることが難しくなっている。こういった状況から、彼らの栄養失調や脱水症状などの病気が広まっており、医療チームが効率よく仕事を行うことを不可能にしている。
同じように、ギリシア南部に位置するパトラス(Patras)でも、違法状態の移民や亡命申請者に対する逮捕の実施が、世界の医療団の活動の足かせとなっている。世界の医療団は、当局のやり方に対して強く抗議しているが、ギリシア警察は医療チームの近くでも取り締まりを続けており、医療サービスの提供は難しい状態だ。さらに、パトラスにある拘置所への世界の医療団の立ち入りが禁止され、拘置されている人々の健康状態も懸念される。
十分なインフラもないため、移民に対するどんな医療処置も良い結果を生み出さない状態になっている。
このことについてギリシアは、ヨーロッパ人権裁判所などの国際的な機構からも指摘を受けており、移民を対象とした人権侵害に関して非難されている。