動目的は、被災者自身が自分達のケア(セルフケア)をできるようにすることです。震災後3ヶ月が経過した現在、様々な支援が日ごとに縮小し、最終的には被災者の自立が求められています。そこで我々は、被災者の自立を少しでも支援しようと、心身のセルフケア法を指導しています。身体のケアは、心のケアに繋がります。身体の状態は感情と密接に関係しているため、身体的なストレスや疲労を軽減することで、心も同時にケアをすることができます。 運動は、簡単なマッサージやストレッチで構成されています。ヨガや武術などのボディーワークを学んだ指導者や、独自の手技を持つ指導者が、被災者の方々とのコミュニケーションを通してその方に合った方法を提案・実施し、被災者本人に運動の効果を感じてもらい、セルフケアのモチベーションを高めてもらいます。また、提案した内容を継続してもらうために「体と心のコリをほぐす運動」というパンフレットを作成し、指導時に配布もしています。
被災者の方の中には「自分は大丈夫だから他の人をケアして欲しい、自分より大変な人がいるからそちらを先に…」と支援を受けることに消極的な方がいらっしゃいます。そんな時でも、「せっかく来たので、ちょっと触らせて下さい」と言いながら肩を揉んでみると、スキンシップや身体がほぐれる気持よさも手伝い、自然と自分の体験を話してくださる方もいます。被災者の中には、気を緩めることに抵抗を感じる方がいらっしゃるようですが、身体だけでも緩めましょう、というアプローチは有効だと感じています。また、「身体は疲れても平気だけど、心が辛い」という方もおられ、そんな時には「身体をほぐすことで心も少しは軽くなるかもしれません」とお伝えし、支援を受け入れて下さる方もいらっしゃいました。
このような活動を通して様々な避難所を回る中で、「自分で出来るのが良い、私に合ってる!!」と仰る方や、会うたびに背筋が伸びていたり動きが機敏になっている方がいらっしゃいました。震災後に膝や腰の痛みが酷くなった方や、肩、首のコリが酷くなった方もたくさんいらっしゃいましたが、「痛くなくなった」「楽になった?」等の感想をいただき、逆に我々が元気をもらっています。また、「血圧が下がった」と声を掛けて下さる方も多く、震災のストレスがいかに身体に負担をかけているかを実感するとともに、改めて運動・リラクゼーションの効果を感じることができました。何よりも嬉しいのは、セルフケアを実践された方々の表情が変わっていることです。運動のみならず様々な支援活動の効果も含め、最初にお会いした時とは別人のように明るい表情になっている方を見ると、活動に参加して良かったと心から思うと同時に、東北人の強さを感じることができました。
最後に、運動支援チームには、ロシア武術やフェルデンクライス・メソッドの小山先生、ヨガ、タイ式マッサージの小松原先生、何でもできる筋肉お兄さんの藤田先生、ボディートーク、少林寺拳法の甲斐先生など、様々な個性と能力を持った指導者がコンセプトを共有して支援にあたっています。ご協力いただいている関係各位に改めて感謝いたします。
運動療法の専門家 博士(医学) 泉水宏臣