東日本大震災:現地医療活動レポート6

東日本大震災から2か月半が過ぎた。マスメディアの報道が徐々に減ってきている今、被災地では様々な意味での復興活動が進んでいる。

東日本大震災:現地医療活動レポート6
仮設町役場や仮設診療所は開設から約1か月経過し、仮設住宅の建設も徐々に進んできている。教育の場である学校も授業を再開し、制服や指定運動着を着た生徒に出会うことも増えた。学校の廊下ですれ違う度に、溌剌とした挨拶を投げかけてくれる沢山の生徒たち、教科書は津波に流されてしまい、自分で調べられないが出来るところまで宿題をすると話す生徒たち。このような日常の光景から、大槌町が少しずつ動き始めていることを感じる。

その一方で、ひとつの括りに出来ないのが被災者の方々の”こころ”の状態である。
「今も、家族が行方不明です」、「家族が全員亡くなってしまい、親戚の家にお世話になっています」、「やっと家族が自分の手元にお骨として帰ってきて、少し気持ちが落ち着きました」。家族の喪失に伴う悲嘆の状況は、被害の甚大さや未だ行方不明者が存在することにより、さまざまな様相を呈している。また、「震災前から家族関係が不安定だったのに地震と津波が来て、もう限界なんです」と話す方も居られ、震災が直接的だけではなく間接的に人々の”こころ”に揺らぎを与えている状況がみられる。このように時間が経つにつれ、震災による直接的な心理的反応へのケアだけではなく、震災以前から存在していた家族が抱える課題へのケアもまた必要になりつつある。『家族』は、災害発生時から復興期にかけて多くの人々が身を寄せ合う単位であり、心理的な安定を得たり互いを助け合う機能を果たす。そのため『家族』をケアすることは、被災された方々が復興に向けて動き出すための基盤を支えることに繋がると考え、私たちは日々の活動を行っている。

世界の医療団こころのケアチームは、子ども、成人、高齢者、家族、そして教師や避難所の管理者、町役場職員など、様々な立場に居られる方々へのケアを展開している。しかしながら、ケアが必要にもかかわらず、未だ受けられていない方も存在することを私たちは危惧している。そのため、個々へのケアだけではなく、こころのケアチームの存在の周知を図ることもまた、私たちの大切な活動のひとつなのである。

看護師 赤崎 美冬

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