東日本大震災、原発事故から8年という月日が経ちました。いまだ避難指示解除がされない地域、避難指示解除が間近にせまる地域、解除から数年、1年、それぞれの地でそれぞれの時間が続いています。どの地であっても、震災は今もハード面、人々のこころにも影響を残しています。世界の医療団は、2012年より相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会:なごみとパートナーシップを組み、相双と呼ばれる3つの複合型災害が起こった地域でこころのケア活動に取り組んできました。活動も7年となり、その間にも、住民の方々は被災から復興という過程の中で環境や生活、人生そのものの変化を経験され、手探りながらこころのケア活動もその変遷に向き合ってきました。
その7年の経験と学びを共有し、これからの住民支援の中にこころのケアをどのように取り込んでいくかを議論する目的で、2019年3月13日、福島県双葉郡富岡町にて「交流の場づくりとこころのケア」を開催しました。
サロン(集団活動)の雰囲気そのままに、できるだけリラックスした場になるよう会場セッティングにもこだわり、会はスタートしました。
まず世界の医療団支援事業部マネージャーの米田祐子より、本会を開催した経緯についてお話させていただきました。
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相馬広域こころのケアセンターなごみ(以下、なごみ)の立谷洋 氏と世界の医療団(以下、MdM)の横内弥生 臨床心理士からは、集まる場づくりについて。
ハード面だけでなくて人とのつながりを失ってしまった、場所だけでない、かつて自分が生活していた暮らしまでも失ってしまった、地震、津波、原発事故、あるいはそのすべてを被災し避難を余儀なくされていた人々。
復興公営住宅をはじめとした帰還後の新しい生活、そこにはコミュニティ再構築をするということの難しさが伴いました。日常に溶け込んだいつもそこにある場=サロン、同じ時間に、同じ場所での開催が安心感、安全感をもたらすと考え、仮設住宅で、復興住宅で、帰還が始まった地域で開催してきました。サロンでは、工作や調理など季節のメニュー、グループ制作、参加者たちの声から生まれた活動など、常に続ける工夫を凝らしています。「いつもの場所で」「助けたり、助けられたり」しながら、住民主体のこころのケア活動になっていくことを目指しています。
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そして、不特定多数の場所が交わる場、交流の手段としてのサロン、それは街づくりにもなる「おだかぷらっとほーむ」がスタートしました。浪江で始まったのは運動教室という名のしゃべり場、共にその時間を過ごし、共有することで、縁がつながっていく、そんな思いが込められた場所と時間。
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その後のグループワークでは、参加者全員で「住民との接し方」「交流の場づくり」をテーマに発表からの学び、普段心掛けていること、難しいと感じることをそれぞれのグループに分かれ、共有し合いました。当日の出席者のほとんどが支援に携わる方たちでしたが、背景がそれぞれ異なるなか、思い思いにこうなったらいいなと思うこと、難しいと感じることを語る時間になりました。
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大川貴子理事長からは、震災直後の集団活動のはじまりとその活動「ちょっとここで一休みの会」「いつもここで一休みの会」についての振り返りがありました。ここにくれば人がいる、ここに来れば人が集まる場所がある、定期的にやり続けること、あり続けることの意味、人材が不足する中で途絶えさせずにきたこと、細く長くやってきたことが今につながる。
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何かしら楽しめる時間、集中できる時間、達成できる時間がモチベーションになる。
話をする、話を聞く、何か活動する、身体を動かす、いろんなものを織り交ぜながら、こころに働きかけることが大切だと思う、というお話がありました。
最後に、世界の医療団日本の事務局長畔柳 奈緒の挨拶で閉会となりました。
世界の医療団となごみが協働して7年、誰もが経験したことのない複合型災害の被災地では今後もこころのケアのニーズは変化していきます。福島のみなさんの回復力・レジリエンスとともにそれぞれ強みを活かしたこころのケアを続けてまいります。
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セミナー「交流の場づくりとこころのケア」
日時: 2019年3月13日(水) 13:00-16:00
開催場所: 富岡町文化交流センター学びの森
主催: 世界の医療団
共催: 相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会、みんぷく、ふくしま連携復興センター
後援: ジャパン・プラットフォーム(JPF)、ふくしま心のケアセンター
「福島こころのケアの実践と教訓」冊子はこちらからご覧いただけます。