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ラオス小児医療強化プロジェクト:現地活動(豪雨被害支援活動)レポート Vol. 2

被災3村を訪問 ~感染症対策アウトリーチ活動~


被災地域では、8月末から9月初旬にかけて、仮設家屋周辺の衛生状態の悪化を原因とする下痢や感染症の蔓延が懸念されていました。
フアパン県保健局・フアムアン郡保健局は、ヘルスセンターを通じてサーベイランスを実施、今後も続く仮設家屋生活に向け、住民にできる予防習慣を強化したいと、アウトリーチによる健康教育の実施について調整を進めていました。一方で、世界の医療団は、衛生習慣が失われがちな仮設家屋の環境をできるだけ被災前に近い状態に戻すための支援を実施すべく、調整を進めてきました。
今回は、県・郡保健局と世界の医療団が4日間にわたり合同で実施した被災村へのアウトリーチ活動の報告です。


1日目、村人の半数以上が家屋の全壊・半壊被害を被った村へ


洪水の被害がなかった学校の前庭にて、夕方から健康教育の準備に取り掛かります。暗くなり始めたころ、子どもたちが続々と集まってきます。プロジェクターを利用するのに程良い真っ暗になるころ、大人たちも集まってきました。

余興はコメディ番組のビデオ。被災地では、直接の被害を受けた方々は笑うことが少なくなり、また、直接の被害はなかった方々は笑うことにためらいを感じたりすることがあります。こういったコメディを鑑賞することで住民たちに笑顔が戻り、大人も子どもも少しだけ緊張がほぐれたように感じました。
衛生教育の本番では、ビデオを投影しながら「手洗いやその他の衛生習慣を徹底することで感染症リスクがどれだけ減少するのか」について、県・郡保健局により説明がありました。洪水後、半数近い家族が仮設家屋に移った結果、水場へのアクセスが悪くなったうえ、水を溜めるバケツも洪水で流され、手洗いや食事後の片付け、衣服の洗濯などがおろそかになりがちです。

翌朝、世界の医療団は、県・郡保健局スタッフとVHC(村落健康普及委員会)メンバーの協力を得て、衛生用品の配布を行いました。家屋全壊家族には水を保管するためのバケツも配布、仮設家屋のそばに水をため、手洗いや清掃習慣の復活を促進する環境を整えました。

豪雨被害支援活動 (写真左)先に集まってきた子どもたちがスクリーンのすぐ前に座ります (写真右)村には電気が戻っておらず、懐中電灯持参


昼からは2村目に移動


衛生環境アセスメント班
水源とトイレ設置計画位置の距離を測る衛生環境アセスメント班
村のVHC(村落健康普及委員会)メンバーとの打ち合わせの後、夜は健康教育を実施。翌朝、郡保健局の水衛生管理局スタッフ、村長、世界の医療団で衛生環境アセスメントチームを組み、仮設家屋エリアの衛生状態をチェックします。着目点は、トイレの有無と使用状況、水場へのアクセス、家庭ごみの処理状況です。
この村では仮設エリアが複数か所に分かれており、仮設トイレ(地面に穴を掘って用を足す簡易小屋仕立てのトイレ)は設置されていませんでした。また、水場から遠い丘の上にも仮設があり、住民の不便は明らかでした。


衛生環境アセスメント班
アセスメント後の打ち合わせ
アセスメント終了後、結果を全員で共有し、問題点を抽出し対策を検討しました。また、郡保健局スタッフからは、建設資材は準備するけれど、トイレの建設自体はVHCが村民の協力を促す必要があることなどを説明していきます。
この村では、新居住地エリアに割り当てられた土地の開墾さえ始まっていません。仮設暮らしが長期にわたる可能性も念頭に、共同トイレ設置2か所、水場1か所を計画しています。



午後、3村目に移動


この村では、学校が倒壊、現在、子どもたちは仮設家屋で勉強しています。川沿いに住んでいた10家族が家と家財を失いました。
もともとこの村の居住範囲は狭く、洪水後、被害がなかった家々の隙間に仮設家屋が建てられていました。また、居住エリアで豚やアヒルなどの家畜が放し飼いにされたり、使用済みの水が水場で池のように溜まっていたり、村全体の衛生状態を悪化させる要因が多々見受けられました。
ヘルスセンタースタッフや保健局スタッフは、この機会に、村全体の衛生習慣の強化を図りたいと考えています。世界の医療団は、全家庭に衛生用品を配布することで、県・郡保健局による衛生習慣の強化をサポートしています。

アウトリーチ4日目の朝、被災した10家族と話し合いの時間をもち、生活物資の支援ニーズを聞き取りました。県当局も把握していない支援物資も届けられており、小さな村だけにニーズは満たされつつあり、被災家族からはこれら支援に対する感謝の言葉がありました。

豪雨被害支援活動
もともと家があった土地は、すぐに開墾して畑としての利用
しかし、この村はフアムアン郡のなかでも貧困度が高い村のひとつ、迅速に生計を立て直すことが重要です。県当局によると、政府からの支援として、被災した田畑からの収穫をいち早く補填すべく、被災後は代替作物の苗や種を支給することが多いとのこと。

この村では、家が流された跡地でもその持主が畑を開墾する準備を既に行っています。このため、被災家族からは農具を要望する声がありました。洪水で農具一式が流されてからは、被災していない家族から借りているとのことで、双方不便があるようでした。

これら3村では、衛生教育、衛生環境アセスメント、衛生用品配布のほか、県・郡保健局が健康診断、予防接種、母子保健サービスを実施しました。関係者全員が懸念していた被災を起因とする感染症の兆候は今のところなく、ひとまず安堵したようです。

今後も県・郡保健局はサーベイランスを継続、世界の医療団は共同トイレ・水場建設計画を彼らと進め、支援が行き届いていない必要物資の配布を進めていきます。


裸足で洪水後の地面を歩く子どもを心配する村人の要望に応え、サンダルと靴下を就学前の子どもたちに配布。
手拍子で順番を待つこどもたち。

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