事業地の豪雨被害について
9月に入り降雨量や川の水量は減りましたが、徐々に被害状況が明らかになってきました。現地事務所では県内各部署からの情報収集を開始。各部署間の情報集約や連携が課題となっていること、また、徐々に支援策がたてられてはいるものの、予算の目途が立っていないことも当局の悩みとなっていることが明らかになりました。
さらに、フアムアン郡保健局と会議をもち、郡内の被害状況や郡保健局による被害対応状況について、より詳しくヒアリングした結果、被災以前よりも多くの患者を受け入れなければならなくなったソプラオヘルスセンターの機能強化が急務であるとの認識が一致しました。ソプラオヘルスセンターは、川の向こう岸にあった隣県の小病院が川の氾濫で倒壊したため、隣県からも患者を受け入れています。電気の供給は一ヶ月近くありません。
また、郡内でも洪水被害の大きかった3村の保健衛生環境の向上についても、協力要請がありました。
世界の医療団の支援活動
9月19日、同郡内で活動する他のNGOから自家発電用のジェネレーターを借り、ソプラオヘルスセンターに導入しました。医療施設になぜ電気が必要か。それは、懐中電灯による夜間診療は心もとないばかりか、ワクチン・医薬品の保存には冷蔵庫、清潔な診療器具を維持するための滅菌消毒、それらには電気が欠かせません。
1か月近く懐中電灯で夜を過ごしてきただけに、電気がついたとたんヘルスセンタースタッフに笑顔がもどります。早速、使えなかった滅菌消毒器で消毒を始め、ワクチン保存用冷蔵庫を掃除するスタッフ。心強く感じた瞬間です。
準備が整い次第、ジェネレーターを購入し、借りたジェネレーターと入れ替える予定です。
9月20日には、県・郡保健局スタッフとともに被害の大きかった3村のうち1村で、ニーズの把握と生活環境調査を行うため、村民と話し合いました。
川沿いの水田が被害をうけたため例年の収穫量が望めず、トウモロコシの収穫から少しでも収入を得たいと訴え、この日、被害の少なかった村人は畑にでていました。所持品のほとんどを失った村人は、すぐにでも畑に出たいと、長袖シャツ、ズボン、農作業用の靴、収穫用の鎌を要望しました。一方、グループを分けて聞き取りを行った女性からは、プライバシーのない水場環境の改善、子どもの洗い替え用の服を所望する声などが上がりました。
その後、情報を整理し、一日も早く住民が生活リズムと文化的習慣を取り戻すことができるよう優先度の高いニーズをリストアップするとともに、水場や仮設トイレなどを中心にマッピングを行い、そして衛生環境を改善するために必要な設備と設置場所などを検討しました。
村人に衛生習慣が根付いていなかった過去に経験した感染症の蔓延を思い出したフアムアン郡保健局のスタッフは、一日も早い健康教育アウトリーチ活動を望んでいます。私たちが支援するVHC(健康教育普及委員会)は、その頃から徐々に組織化されてきた村の健康活動リーダーです。今回被害が大きかった3村を含む地域では、世界の医療団の活動で2017年から開始したVHC研修の2回目が終了したばかり。彼らのイニシアティブがきっと貢献するはずです。
洪水などが原因となりうる不衛生な環境の影響を受けやすい存在であるのが、私たちの医療支援活動の対象である5歳未満児です。子どもたちの生活環境が悪化することのないよう、大人たちが衛生習慣と気力を維持し生活を立て直していくことができるよう、私たちは県・郡保健局とともに支援活動を実施していきます。
どうぞみなさまのご協力をよろしくお願いいたします。