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ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage:UHC)の取り組みについて

誰もが保健医療につながることができるように


ラオス母子医療支援
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ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、「すべての人およびすべての地域社会が、財政の困難に遭うことなく必要な医療保健サービスを受けられること」を指します(WHO)。
保健医療サービスを受けることは、すべての人が持つ「権利」です。貧困や差別などいかなる理由によっても妨げられることがあってはなりません。にもかかわらず、現実には、難民、移民、ホームレス状態にある人、受刑者、薬物使用者などの人々は、医療や保健制度から疎外され、権利が奪われた状態にあります。世界の医療団は、こうした最も支援の届きにくい人々に寄り添い、適切な医療を届けると同時に、人々が健康とともに、人間の尊厳と自由を取り戻せるよう支援しています。一方で、これらの人々の権利を保障し、UHCを実現させることは、国と国際社会の責務でもあります。
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、目標3に「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」としています。そして、2030年までに達成するための指標3.8に、「すべての人々に対する財政保障、質の高い基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、および安全で効果的、かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する」と、明確に位置づけています。
世界の医療団は現場で活動するNGOとして、医療を受けられない人々の状況や、当事者の声を伝える国や国際機関に伝え、課題の解決のための有効な政策に反映させるよう働きかけています。UHCの実現のためには、あらゆる立場の人々が連携し、協力することが不可欠です。


政府、国際機関等さまざまな組織とともにUHCの実現をめざす


世界の医療団は、隔月で開催される「GII/IDI※1に関する外務省/NGO定期懇談会」に出席し、UHCや母子保健など,日本の保健援助政策の重要課題について外務省と情報・意見交換を行っています。NGO側からの提言なども、この懇談会を通じて行っています。世界の医療団は、国内外の事業を通しての経験や知見、そして国際的に活動を展開しているMdMネットワークの情報などを活用して、提言につなげています。
また、日本のグローバルヘルス戦略にもNGOとして提言を行い、UHCは一つの政策目標になっています。COVID-19以後の社会は、より 強靱、公平かつ持続可能な UHC を実現していく必要があると指摘され、公衆衛生も大事な取り組みになっています。
さらに、政府、NGO、国際機関、民間企業が連携してUHCを進める国際的な調整機関「UHC2030」に、NGOとして参画しています。事務局長の米良はUHC2030 の「市民社会参画メカニズム」(CSEM)チームのメンバーになっています。
毎年12月12日のUHCデーでは、他NGOらとともにキャンペーンに参加し、多くの人々にUHCの意義について伝えています。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/senryaku/r040524global_health.pdf

2022年度のキャンペーン動画
https://universalhealthcoverageday.org/global-campaign/


※1、GII:人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ IDI:沖縄感染症対策イニシアティブ

日本のユニバーサル・ヘルス・カバレッジの成果と課題


日本は1961年に国民健康保険法が改正され、すべての国民が加盟する公的医療保険が確立しました。これによって医療費を一部負担するだけで、質の高い医療を受けることができるようになりました。公的医療保険制度のない国に比べ、日本は国際的にUHCの達成度が高い国の一つとして認識されています。しかしその一方で、極度の貧困の中にいる人や、高齢者、若者、障害者、在日外国人など、この制度を十分に活用できない人々がいます。世界の医療団が調査に協力し、2021年に実施されたUHC誓約進捗状況調査(https://ajf.gr.jp/globalhealth/healthforall/report/)によると、弱い立場にある人ほど、公的なサービスを受けるためにかかる時間、コスト、労力などが大きくなることが判明しました。学校教育や社会生活のなかで、これらの制度について学ぶ機会が限られており、正しい情報を持っていないというのも、要因に挙げられます。また、ジェンダー格差が大きい日本では、女性がDVや虐待などから医療につながることをためらったり、メンタルヘルスの優先度が低く、質が担保されていなかったりします。世界の医療団は、東京・池袋でのハウジングファースト東京プロジェクトでは、ホームレス状態の方や住まいが不安定の方を対象に、無料の医療相談会を定期的に実施しています。保険証がない、持っていても医療費が支払えないなどの課題を抱えた人々の受け皿になっています。

UHCについてもっと知る


NGOのためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハンドブック→https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000079718.pdf
UHC2030について→https://www.uhc2030.org/
UHCデーについて→https://uhcday.jp/