©Jelle Boone

ソマリア:それでも飢饉に立ち向かう人々

アフリカ東部を襲う干ばつは、現在も続いています。
ソマリアの人々は今、あの26万人が犠牲になった2011年の飢饉に迫りうる壊滅的危機の瀬戸際に立たされています。

ソマリアの人口の半分にあたる620万人が飢えに苦しんでいます。160万人の子どもが栄養不良状態にあり、うち22万5千人の子どもが死に直面するほどの深刻な状況下にあります。また、4万人の子どもたちが水や食料、医療を求めて彷徨い、学校へ通うこともできなくなりました。

「村全体が干ばつに見舞われ、多くの住民が苦しんでいます。赤ちゃんの栄養状態が改善したら、私たちは他の2人の子どもがいる村に戻らなくてはなりません。」世界の医療団が活動するボサソの病院で生後まもない男の子の治療に付き添う母親は話します。

ソマリア:それでも飢饉に立ち向かう人々
ソマリアは年に2回の雨季があります。4月から6月はその時期なのですが、今年は例年の平均雨量よりも10~25%下回ると予測されています。雨が降れば、一時的に状況は改善するでしょう。しかし既にあまりにも多くの畜牛が死に、日照りの影響で穀物の収穫も望みがありません。
そして皮肉なことに、“Gu”と呼ばれる雨が降ればそれは各地に洪水を引き起こし、下痢やコレラ、はしか、マラリアなど特に子どもの命を脅かす感染症をもたらす可能性が考えられます。

「私は深刻な干ばつ被害を受けた村からここへやってきました。家族は家畜の牛すべてを失い、私の赤ちゃんは病気にかかっています。この病院へ来るのにも24時間以上かかりました。この子はずっと吐き続けています、そして合併症にも苦しんでいます。」まだ乳児である娘とベッドをともにする母親は話します。

世界の医療団(MdM)は、2012年よりソマリア東部の港湾都市ボサソで医療支援を続けています。ボサソとその周辺では、飢饉から逃れてやってきた人々の滞在するキャンプが次々と建てられ、現在では6万人が暮らしています。
家族全員で、あるいは母子のみで着の身着のままで辿り着くケースも少なくありません。男性は家畜の世話があるため村に残っているか、もしくはすでに亡くなっていることもあります。MdMはここボサソで避難民や難民となった人々への診療を行うほか、都市部や郊外の医療の空白がある地域において、医療支援活動を実施しています。地域には私立の医療施設があるのですが、費用の高額さゆえ避難民だけでなく、ソマリアの平均的な所得を持つ人たちでさえ通うことが出来ていません。MdMはこの地域で4つの大きなクリニックを運営しており、すべての人を無料で診る24時間診療を提供しています。そのため一部の施設では5万人もの人々に医療サービスを提供しました。そのほとんどはキャンプからやってきた母子が多く、安全な環境下で診療のほか栄養失調の子どもたちに即した食事の提供やセクシュアル・ヘルスケアについての啓蒙活動などを実施しています。

ソマリア:それでも飢饉に立ち向かう人々
医療チームは、栄養不良、妊娠、マラリア、下痢などの初期の兆候、その処置や対応についての情報提供やセッションの開催など啓蒙活動を日々行っています。
在ソマリアMdMのプログラム・コーディネーターのFadumo Abshir Geireは「重度の栄養失調や合併症状がある子どもたちは少なくありません。専門の治療が可能な市内の病院に救急搬送し、そこで特別な栄養治療を行います。入院期間中は母親や付き添いの家族も食事を摂ることができます。」とコメントしています。ソマリアでは、依然混沌とした情勢が続いています。
数十年にわたる内戦や紛争の影響によって経済はいまだ回復途上にあり、インフラは破壊され、修理されないまま今もなお戦闘が激化する紛争地域が散在します。これら全てが支援を必要とする人々の人道支援アクセスを寸断する要因となっています。

そのような状況下であっても、ソマリアの人々の連帯が崩れることはありません。飢餓の発生時、最初に立ち上がったのはソマリアの学生や会社員、そして宗教の指導者たちでした。彼らは今もなお危機の最前線に立ち、自ら支援に奔走しています。
人々が避難するキャンプにおいても、より弱い立場にある家族や衰弱している人のために行動するソマリアの人々の姿を目にしました。

彼らは恵みの雨を祈り、犠牲になった人々に祈りを捧げています。

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