健康で尊厳のある日常:世界の医療団アメリカ理事長 ロン・ウォルドマン博士の声明

ニューヨーク(2017年1月29日) – 最近、私の妻は車のバンパーに “Not My Values(私の価値感ではない)”と書かれたメッセージのステッカーを貼りました。
悲しいことに、このメッセージを見た人全員がこれが何を意味するのか理解しています。

健康で尊厳のある日常:世界の医療団アメリカ理事長 ロン・ウォルドマン博士の声明
短い間に、彼女の価値感、世界の医療団のそれは脅かされ、貶められ、そして違法なこととされてしまいました。 世界の医療団の活動が寛容さや思いやり、そして米国政府をもって成り立つことを、そして他者の価値感を抗議するだけでなく私たちの理念を一点の曇りなく伝えること、それが私たち、そして人道支援を行う者として大切であると考えました。
様々な出来事が瞬時に起こり、衝撃的で動揺を誘うニュースが日々流れてきます。このメッセージでは、私たち世界の医療団がこれまで挑んできた3つの信念について、あらためてお伝えしたいと思います。 

健康で尊厳のある日常:世界の医療団アメリカ理事長 ロン・ウォルドマン博士の声明
1.
私たちは女性の人権を尊重します。新政権発足の第1日めに通称「グローバル・ギャグ・ルール」として知られる「メキシコシティ政策」が導入されるのは、これが始めてではありません。これまでレーガン大統領から後の共和党の大統領がそうしたように、そして民主党の大統領は即座にその制度を廃止させてきました。今回のトランプ大統領によるこの厳しく懲罰的そして有害な大統領令は、今後多くの、その数は決して少なくはない、そして安全ではない中絶が行われる結果をもたらし、自らの支持者をも裏切ることになるでしょう。米国政府が支援するすべてのリプロダクティブ・ヘルス活動の廃止に向けた一連の動きを、私たち世界の医療団は決して受け入れることは出来ません。また、このトランプ氏版「ギャグ・ルール」は、すべての米国所管の機関が行うあらゆるグローバルヘルスにかかわる資金調達活動に影響を及ぼし、最終的に、この方針は過去数十年にわたって積み上げてきた医療セクターにおける数多くのめざましい功績を無効にし、時代を逆戻りさせることになります。女性と子どもたちに与えるインパクトは、計り知れません。すべての女性は1人の人間として、社会的平等、経済的平等、政治的平等、そして医療的平等のもとに、健康で尊厳のある生活を営む権利があります。「グローバル・ギャグ・ルール」はこれらの機会を必要とする人々の権利を否定するものであり、私たち世界の医療団は断固として反対の立場を表明します。 

2.
私たちは、戦争捕虜や拘留、逮捕、もしくは投獄されたすべての兵士と市民に対する人道的な扱いを尊重しています。単に役立つ情報を持っていそうだというただそれだけでの理由で、証拠もないままに「拷問」という野蛮で違法な手段を用いること、を容認する忌まわしく許しがたい発言が米国の大統領によってなされました。
「たとえそれが不当な闘いであったとしても、私たちは私たちの国が敵を非道徳的に追い込むことよりも、正当な方法で戦い抜くことを望んでいます。世界の医療団は国連による拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱いまたは、刑罰に関する条約)を支持するとともに、また人道支援を行う医療支援団体として、拷問が私たちの活動を導く倫理基準をも脅かすものであることはここで述べるまでもありません。国防長官やCIA長官を含む現政権の閣僚たちでさえ私たち同様の見解を持っているとみなしており、彼らによって正しい判断を下されることを強く期待しています。

3.
私たちは、政治的混乱、内戦、紛争、または政治的、民族的、宗教的迫害の恐れから逃れたすべての人々が難民申請をする権利があると信じています。私たちの祖国である米国は、彼らと同じような過程を経て辿り着いた人たちによって建国されました。そして難民たちがあらゆる人生で残したその痕跡によって、米国の歴史は豊かなものになりました。米国が担ってきた世界でのリーダーシップは、共感、チャンス、歓迎の思いがあってからこそ成り立つものでした。米国が掲げる難民受け入れプログラムは、長年世界においても尊重されてきました。シリア難民とイスラム教国7カ国からの入国禁止令、そして4ヶ月間の難民受入れプログラムの停止措置、これらの規制は不当かつ非人道的であり、いまだ紛争地帯にいる多くの人々の移動の自由をなくし、結果的に彼らの健康を脅かすことにつながります。必要のない、失われていい命などありません。 これら方針は、私たち世界の医療団の、そして社会の基盤を形成する上での倫理的・道徳的概念に真っ向から反するものであることは明らかです。

「グローバル・ギャグ・ルール」の導入、拷問手法の復活、そして難民受入れ停止とイスラム教国からの入国禁止、米国大統領によるこの3つのアクションは、世界の医療団の活動と支援を必要とする人々にとって悪影響を及ぼします。 そしてこれらアクションは最も弱い立場にあり、最も社会から疎外されている人々の苦しみを深めるだけでなく、声を上げることもできないまま更なる窮地に追いやることに他なりません。
私たち世界の医療団は医師、そして医療に携わる一員として、これら方針の対象となるすべての人々の代わりに声を上げます。現在もこれからも私たちの価値感と理念を明確に伝え、この不当な政策に対し、犠牲を払うこともその価値感を放棄することは決してありません。


世界の医療団米国理事長
ロン・ウォルドマン 医学博士、公衆衛生学修士
Ron Waldman, MD MPH
President
Doctors of the World USA

原文はこちらから

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