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ラオスの今
近年、ラオス経済は成長過程にあるものの後発開発途上国からの脱却は未だかなっておらず、国内では都市部と農村・遠隔地との貧困格差の拡大が顕著となっています。医療保健政策についても、ラオス保健省がユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC:すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを支払い可能な費用で受けられる状態)に向けた取組みを進めていますが、依然として国家予算に占める医療保健予算の割合は低く、国際機関や各国政府の支援や協力が欠かせない状況が続いています。
©MdM Japon
数字で見るラオスの医療事情
人間開発指数:138位(188ヵ国中) 出所:国連開発計画(UNDP)人間開発報告書2016年
*人間開発指数(HDI)は、保健、教育、所得という人間開発の3つの側面に関して、ある国における平均達成度を測るための指標
5歳未満の乳幼児死亡率:66.7人(1,000人あたり死亡者数)出所:世界保健統計2016
新生児死亡率:30.1人(1,000人あたり死亡者数)出所:世界保健統計2016
出世時平均余命:65.7歳 出所:世界保健統計2016
医師数:1.8人(10,000人あたり)出所:世界保健統計2015
乳幼児・新生児の死亡率は世界平均よりはるかに高く、また医師をはじめとした医療従事者数の水準(日本は23人/10,000人あたり)も低いことがみてとれます。
国土の大部分が山岳地帯であるラオスでは、医療施設へのアクセス自体が非常に困難であり治療を必要とする時に診察を受けることがままなりません。また、経済的な理由による医療の未受診、医療スタッフの知識や経験不足、住民の衛生と健康への意識の低さなどの理由から、下痢や肺炎など治療可能な病気によって、助かるはずの多くの幼い命が失われている状況がありました。
チャンパサック県での実績
このような状況を受けて、世界の医療団(Médecins du Monde:MdM)日本は2012年から3年半にわたりラオス南部のチャンパサック県内にて小児医療技術支援、村落での健康啓発活動および5歳未満児に対する医療無償化政策の実現化に向けた支援活動を行いました。プロジェクト実施後、子どもたちによる健診を含めた医療の利用機会の増加、住民たちの健康に対する意識改革にもつながりました。また、地域保健局や村落健康普及ボランティアによる自主的な活動が継続されるまでの成果となりました。
そして・・・
その後の調査にて新たな支援ニーズが確認されたこと、チャンパサック県で培った実績を活かすべく、3年間の新たな小児医療強化プロジェクトが決定しました。
チャンパサック県からラオス北部フアパン県へ
新しいプロジェクトの実施地であるフアパン県は、貧困率、5歳未満児の死亡率は1,000人中45人(2019年県レベル公式データ最新)と高く、ラオスの全国平均を大きく上回っています。
そのフアパン県の中でも特に貧困率が高いのがソン郡(42.8%)、フアムアン郡(45.0%)。
MdM日本が2016年に現地で医療調査を実施した結果、両郡とも村の8割が小病院のアウトリーチサービスを必要とする遠隔地にあり、人員不足などの理由からニーズにあった医療サービスの提供が行われていないことが判明しました。
さらに、フアパン県においては2016年半ばより5歳未満児の入院費用補助が導入され、2017年からはUHC導入による外来診察費補助が開始となりました。今後、医療施設の利用者数の増加が予想されます。
そのような状況のなか、配置されている小病院の職員は、小児医療に対する技術・知識不足を自覚しており、自らの診療スキルに自信を持つことができずにいます。
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ラオスの子どもたちに安定した医療を
こういった現状を踏まえ、MdM日本はフアパン県ソン郡とフアムアン郡にて新たなプロジェクトを実施しています。
- 5歳未満児に対する診療技術の向上を目指し、県・郡の保健行政に従事する郡病院・小病院スタッフへの小児医療研修、現場での技術指導を含む臨床現場監督チームの指導力強化
- 村落における小児医療に関する正しい知識の普及に向けた村落健康教育の担い手の養成
- 子どもの診療に必要な医療備品、遠隔地村落の子どもの健康管理に必要とされる物品の提供
子どもたちの健康を守ること、それは将来この国を担う人材を育むことであり、ラオスという国の未来を支えること。
*本事業は事業資金の多くを外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を受け、2017年2月より活動を展開しています。
【本事業のスポンサー企業】
いちよし証券株式会社:2016年の現地調査段階から、定期的な寄付金によるご支援をいただいています。
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現地活動レポート一覧
2024.04.25:ラオス プロジェクト開始から5年 山岳地帯に根づき始めた医療
自分たちの手で健康を守っていくために
2023.09.11:ラオス地域医療強化プロジェクト
命がけのお産から、安全な出産・子育てへ
2022.12.28:ラオスでチャリティーガラを初開催
2021.07.12:ラオス 持続可能な医療体制が根付くことを目指して
2021.05.14:世界の医療団、ラオスでの新型コロナウイルス感染症緊急対応を開始
- 医療基盤がぜい弱なラオス北部フアパン県にて、感染予防のための啓発活動へ
2020.03.18:症例発表から症例検討へ、治療だけでない搬送や問診を振り返る大切さを学ぶ機会に
2019.11.01:現地活動(活動計画・事業モニタリング)レポートVol. 3-3|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
5才児未満死亡率削減と持続的小児医療の確立を目指す長期支援活動のなかで見えてきたもの
2019.10.07:現地活動(医療スタッフ能力向上)レポートVol. 1-5|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
世界の医療団は、対象地のヘルスセンターや郡病院スタッフ、県病院スタッフによる子どもの診療の質を高めるため、2017年から*IMNCI研修、2018年からポケットブック研修を毎年実施しています。
2019.09.13:現地活動(豪雨被害支援活動)レポートVol. 4|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
昨年夏、記録的大豪雨に見舞われたラオス。家や橋や病院が流され、多くの死傷者も出ました。停電が続き残ったヘルスセンターは機能せずの日々。世界の医療団も活動中止せざるを得ない状況でした。あれから一年、皆さまのご支援を受けて復旧に取り組んできた村々は今。。。
2019.08.27:現地活動(村落健康教育活動)レポート Vol. 2-2|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
2019年、県・郡保健局と2年間を振り返りました。その結果、3回目のVHC研修は、各VHCが自分たちの村で行う活動をアクションプランに落とすということを目標としました。
2019.01.30:現地活動(豪雨被害支援活動)レポート「ラオス大豪雨から5ヵ月 ソプラオ・ヘルスセンターの今」|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
昨年夏、記録的豪雨に見舞われたラオス。ある小病院では決壊した川の対岸にあった病院が倒壊、隣県からの患者を受け入れることに。看護師の2人が今を語ってくれました。
2018.11.20:現地活動(豪雨被害支援活動)レポートVol. 3|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
緊急支援の現場では、被災地域・被災村で被害の程度や支援のニーズが異なります。世界の医療団は、保健局と協働し事前の情報収集とニーズ調査を行ないました。
2018.11.13:現地活動(医療スタッフ能力向上)レポートVol. 1-4 ポケットブック研修|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
WHO発刊「病院における小児診療ガイドブック」いわゆる”ポケットブック”に基づく初めての研修が、2018年7月に実施されました。
2018.10.30:現地活動(豪雨被害支援活動)レポート Vol. 2
2018.09.26:現地活動(豪雨被害支援活動)レポート Vol. 1
2018.06.25:現地活動(医療スタッフ能力向上)レポートVol. 1-3|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
小児診療技術についての臨床研修や村落健康普及委員会(VHC)向けの研修を担当する県・郡病院や保健局スタッフを対象に実施された「トレーナー研修」についてのレポートです。
2018.06.04:現地活動(活動計画・事業モニタリング)レポート Vol.3-2|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
2018年活動計画ワークショップ
2018.05.29:現地活動(活動計画・事業モニタリング)レポート Vol.3-1|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
2017年実施管理委員会年次総会のご報告
2017.11.21:現地活動(村落健康教育活動)レポート Vol.2-1|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
村落健康教育普及活動(村落健康普及委員会への研修)の様子をお伝えします。
2017.10.31:現地活動(医療スタッフ能力向上)レポート Vol.1-2|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
ヘルスセンタースタッフに向けて行ったIMCI臨床研修について報告します。
2017.10.26:現地活動(医療スタッフ能力向上)レポート Vol.1|熊澤幸子|ラオスプロジェクト担当
「保健医療スタッフへの研修」について、初年度の主な活動はIMCI研修の実施です。
2017.07.03:現地活動レポート「スーパービジョンから見えてきたこと」
|ジェニファー・ヤン|医師
医療システムの構築に欠かせない大切な活動から見えてきたことをヤン医師が述べています。
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自分たちの手で健康を守っていくために
命がけのお産から、安全な出産・子育てへ
|ジェニファー・ヤン|医師